Survive PLUS ~頂点への道~BACK NUMBER
かつては格上だった相手に「余裕」。
吉田麻也がオランダで実感した成長。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byAFLO
posted2015/08/20 10:50
サウサンプトンで今季はCBのファーストチョイスとして出場機会が増えることが濃厚な吉田麻也。岡崎慎司との対戦も楽しみだ。
逆サイドのSBにもクラブの約束事を教える吉田。
さらに吉田は、自分とは一番遠い場所にいる右SBのクコ・マルティナにも、プレーが止まるたびに大きなジェスチャーで入念に指示を送っていた。彼もまた、この夏にセインツ(サウサンプトンの愛称)に加わった新顔だ。
「うちの守備はSBの働きもすごく重要になってくる。フィテッセはオランダのチームらしく、しっかり後方からパスをつないでビルドアップしてきた。こちらのSBが相手の深い位置までプレスに出て行くことで、後方のスペースを埋めるためにCBがサイドにズレる。すると、瞬間的に相手の3トップと上がった(4バックのうち)SB以外のDF3人が同数になってしまう。そこでは逆サイドのSBがしっかり中央に絞る動きが大切になってくるので、前半は僕の左サイドが高いポジションを取ることが多かった分、右サイドのマルティナがもっと中に絞らないといけなかった。
こういうカバーリングの意識や動きも、他のチームではやらないところもある。だから今日は同じSBとしてプレーしていたので、逆サイドからでも彼に伝えていました。そのあたりはDF4人がもっとオートマティックにできるようにならないといけない」
SBが中央に絞り、ピンチを防ぐプレー。それは吉田がCBでプレーしている時も、常にSBの選手に口酸っぱく要求する動きだ。
吉田の要求で、SBのクラインも急成長して代表に。
サウサンプトンで昨季ブレイクを果たし、今季リバプールへと移籍した右SBナサニエル・クラインという選手がいる。彼はかねてから攻撃では鋭いプレーを披露していたが、守備ではこの絞るプレーに常に甘さがあった。吉田は隣でプレーしていた彼に、いつも試合中からその修正を要求していた。いまでは攻めでも守りでも安定したプレーを見せるようになり、イングランド代表にも選出されている。サウサンプトンという組織的なサッカーを演じるチームで、クラインは理想的なSBに成長していったのだ。