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ACL敗退、Jでも不調、苦悩の鹿島。
育成主義が直面した壁と世代交代。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byJ.LEAGUE PHOTOS
posted2015/05/13 10:30
鹿島で今季からキャプテンマークを巻き、名実ともに中心選手となった柴崎岳。しかしその柴崎も、遠からず海外へ移籍することが確実視されている。
他クラブの青田買い、下部組織の充実という逆風。
それでも、常に優勝争いが求められるクラブだからこそ、出場機会が得られず、数年でチームを去る選手もいる。小笠原ですら、出場試合が20試合を超えたのは3年目のことだ。ゴールデンエイジと呼ばれる彼らも「シドニー五輪代表で活躍していても、チームで試合に出ていない」と言われた時代があった。実際にトップチームで力を発揮できる選手になるかどうか、選手育成は容易くはない。
しかし、他クラブでもサンフレッチェ広島が全国規模でユース選手を探すようになったり、各Jリーグのクラブが下部組織の育成に力を入れはじめると、高校の部活でプレーする有望な選手の数が減った。それは育成年代の代表チームが、ほとんどJリーグの下部組織所属選手で占められていることでも明確だろう。
そんな中でも鹿島は、早い時期から選手の獲得を表明したり、新卒ルーキーを少数精鋭で獲得したりと工夫している。たとえば、2010年の新卒はGK1名にとどまっている。それは、翌2011年に柴崎(青森山田高)、梅鉢貴秀(関大一高)、土居(鹿島ユース)、昌子源(米子北高)の加入が見込まれていたからだ。
「他クラブで結果を残した選手を獲得して、“補強”するのではなくて、新卒から育てていくのが鹿島らしさ」と小笠原が誇らしげに語っていた。
育てた選手の欧州移籍が常態化。
とはいえ、Jリーガーが欧州マーケットで評価を得るようになった近年、選手獲得競争は激しくなる一方だ。日本代表に入るまでに育てた選手が、欧州へと移籍してしまう。まるで息子のように愛情を持って育てた選手だからこそ、欧州舞台で高い評価を得てのオファーは、鹿島のスタッフにとっても喜びだろう。「挑戦したい」と志を抱く選手を引き留めることはできない。それは海外に限らず、国内移籍でも同様だ。移籍を希望する選手を無理やり残したとしても、それはクラブにとっても、選手にとってもプラスにはならない。
しかし獲得から5年ほどで、中堅として軸になるべき選手がチームを離れることの影響は決して小さくない。その穴を埋めるための選手の“補強”から目を背けることは鹿島とて許されない。