マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
なぜ練習ばかりで見学しないのか。
松山で考えた、日本野球の「盲点」。
posted2015/01/01 11:00
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
Asami Enomoto
以前は、秋の最後の“野球の現場”は「くまのベースボールフェスタ」(三重県熊野市)だったのだが、ここ数年は四国・松山に飛ぶ年もある。
翌年の国際試合に備えて、大学日本代表チームの選考合宿が行なわれる松山・坊っちゃんスタジアムだ。
100m近い両翼に高いフェンスをめぐらし、外野ポールにまで観戦スタンドを備えたこの雄大なスタジアムを、その年の“締め”の現場にしている。
今回は全国の大学リーグから推薦された選手たちおよそ40人に、今回は初めての試みとして、彼らの「お手本役」となる現役の社会人選手が5名参加した。
初冬の快晴の空の下、50人ほどの選手が外野グラウンドに散らばってアップを始めている。壮観である。
まだ“候補”たちだから、着ているユニフォームは当然、母校のものである。1校から2人、3人と選ばれている大学もあるが、たいていは1校1人だから、ざっと30種を超える大学野球チームのユニフォームがグラウンドに躍る。
ユニフォームマニアの方がいたら、これはこたえられない光景であろう。いわば“ユニフォームのお花畑”である。
さすがは日本代表の候補たち。
来春4年生になる学年の選手が最も多く、全体のほぼ6割。その下の2学年が残り半々ずつ。
いずれアヤメかカキツバタ。どの選手をとっても、候補として選ばれた理由がすぐにわかるような、間違いなく逸材ぞろい。近未来のプロ野球界を形成していくはずの腕利きぞろいである。
彼らはどんなアップをしているのか?
そこから興味があったから、メニューの具体的な動作をメモしてみたら、およそ20種類になった。もちろん、この合宿専属のトレーニングコーチの指導のもとである。
シートノックが始まる。
この合宿のリーダー役である明大・坂本誠志郎捕手(履正社)のスローイングがコンスタントだ。東北福祉大・長坂拳弥(健大高崎)の身のこなしは捕手そのもの。ちょっと待て、地肩の強さならあの見慣れないユニフォーム姿だ。なに? 城西国際大・宇佐見真吾だと?
フィールディングのスピード感なら立教大・大城滉二(興南)だ。負けてないのが無名の逸材・吉川尚輝(中京学院大←中京)だが、どこか動きがほんとじゃない。ちょっと照れているのか、そんなぎこちなさでボールがなかなか手につかない。