プロ野球亭日乗BACK NUMBER
「笑う阪神」ではCSを勝ち抜けない。
揃った戦力と勢い、あとは厳しさだけ。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/10/10 12:00
終盤の接戦を制してシーズンを2位で終えたことで、来季の続投が決定した和田豊監督。本拠地甲子園で、広島を迎え撃つ。
今年の阪神は、戦力的には最も充実していると言える。
今年のCSを戦力的に見れば、阪神は決して弱くはない。ファイナルステージで出てくる巨人も、エースの菅野智之投手の登板が極めて厳しい中では、むしろ3チームの中で一番、充実した陣容を持っていると言えるかもしれない。
短期決戦の要である投手陣は、先発にはメッセンジャーを軸に能見篤史、藤浪晋太郎、岩田稔各投手と駒がそろい、クローザーの呉昇桓投手も盤石である。打線も、打点王のゴメス内野手に首位打者のマートン外野手と外国人選手が元気で、3番の鳥谷敬内野手を加えたクリーンアップは3球団の中で最も強力と言っていいだろう。
あとは昨年顔を出した「闇」への対処。
しかも、昨年との一番の違いはチームに勢いがあることだ。
昨年は、阪神が9、10月に10勝18敗(2分け)と大きく負け越してCSを迎えたのに対して、広島は16勝9敗(1分け)と終盤に勢いをつけてポストシーズンに突入してきた。その差のままに初戦を取られると、あっさりと連敗で決着がついてしまった。
しかし今年は逆だ。
広島が9、10月を12勝16敗と失速して、2位がかかった最終戦もエースの前田健太で敗れて終わった。一方の阪神は、9月以降を13勝13敗と五分で乗り切っただけでなく、2位がかかった9月15日以降は9勝5敗と勝ち越している。
戦力、勢いは少なくとも広島を上回り、ひょっとしたら巨人すらも凌駕するものがある。
そう、阪神にとって今年はファイナルステージまで進んで、下克上で巨人を破る大チャンスなのである。
あとは、昨年顔を出したチームの「闇」に、どう光を照らすことができるか。選手ひとりひとりに、どう勝つことに執着する意識を植えつけるのか。それは、チームを率いる和田豊監督の手腕に尽きるということになる。
9月9日からの巨人との甲子園最終決戦の総括でも書いたが、巨人・原辰徳監督と阪神・和田監督のベンチワークの一番の違いは、1点に対する意識にある。