野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
野球芸術家の卵たちが集結。
「がんばれ! 日本橋ベアーズ」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2014/08/26 10:30
展覧会の告知フライヤー。ながさわ画伯の画力は依然健在である。
ながさわ「野球場には、芸術がナチュラルに溢れている」
「いや、参りましたね。僕が甘かったです……」
「日本橋ベアーズ」監督、ながさわたかひろは、そう言って頭を垂れた。
「でもね、違うんですよ。僕はね、世の中の人たちに芸術だけじゃなくいろんなジャンルで、もっと野球を題材にしたアクションを起こしてほしいと思っていて、この“日本橋ベアーズ”結成もその一環だったんです。
いやいや、言い訳っぽくなりますけどね。素人のおばちゃんを俺が無理矢理呼んできたのも、選手に渡すためだけに作った人形、これはもう純粋アートですよね。そういうものが、ちゃんと野球芸術として作られた作品に勝ってしまうんじゃないかっていう興味もあったんですよ。
世の中には、野球場には、そういった芸術作品がナチュラルに溢れていますからね。それと、こういう試みをしたのもね、観に来た人が『なんだ、こんなもんなら俺の方がいいもの作れるよ!』と道場破りに来るようなね、そういう展開になれば面白いじゃない。僕はね、刺激を与えて欲しいんですよ。
そう、僕の目指すところは芸術という分野だけじゃない。ホラ、みんながそれぞれの表現をできるような土壌ができれば、野球はもっと可能性が高まる。もっと面白くなる。だから、みんなやろうぜ!……ということだったんですけどね」
残ったのは、5人の女子。
しかし、である。ながさわがいくら意識を高く「みんな、やろうぜ!」と言ったところで、実際のところ、“野球を表現する”なんてわけのわからん題目よりも、友達と遊んだり、家事をしたりする方が大事に決まっている。
当のながさわとて、当初は「俺も自分のペナントレースに集中したいから、みんなで適当にやっといてくれ」とさじを投げていた体たらくなのである。
ながさわが理想を掲げて結成した野球芸術チーム「日本橋ベアーズ」。そのはじまりは、9人という人数すら集まらず“野球チーム”というコンセプトからすでに崩壊したダメチーム。
それでも残った5人の若き芸術家の卵たちは、奇しくも全員女子。1カ月後に迫ったグループ展は、作品の販売もするいわば“プロ”としての戦いが求められる場。それまでに、この中からテータム・オニールになるような存在は出てくるのだろうか。