野球クロスロードBACK NUMBER
初采配にして色濃く見えた“谷繁流”。
「1点の野球」は強竜を甦らせるのか。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2014/03/31 11:30
3月29日の開幕2戦目、広島のルーキー九里亜蓮を打ち崩せず、谷繁兼任監督は厳しい表情で戦況を見守っていた。
広島との開幕カードで1勝2敗。成績だけで判断すれば、中日のスタートダッシュは失敗した。
特に開幕戦は、ファンにとって悔やんでも悔やみきれない敗戦だったことだろう。
序盤から相手エースの前田健太を攻略し2点を奪った。ところが、6回にキラの本塁打で同点とされてからは、再三チャンスを演出するもあと1本が出ず、延長10回に守護神の岩瀬仁紀が勝ち越しを許してしまった。
後味の悪い敗戦。それでも、新監督として公式戦で初めてタクトを振るい、捕手としてもフル出場を果たした谷繁元信は、苦虫をかみつぶした表情を見せず、それどころか、どこか達観した顔つきではっきりと手応えを口にした。
「終始うちの流れで試合をできたと思います。同点にされてからも流れが変わったわけではないですし、もう1点が取りきれなかった試合でした。岩瀬にしても、1点は取られましたけど次の1点は防いでくれましたし。今日は負けましたけど、ドラゴンズらしい試合展開だったとは思います」
和田一浩は「チームの進むべき道が見えた」と感じた。
思い起こせば、谷繁は昨年のシーズン終了直後に監督となってから、チームの「らしさ」を強調してきた。
就任会見で「1点を守り抜く野球」、すなわち1点の重みをプレーで発揮することを明言し、秋季、春季キャンプではフィジカル面から選手を徹底的に鍛え直した。開幕前日のミーティングでは、「144試合、集中力を持って気迫を込めて戦ってほしい。テレビを見ている人たちにも伝わるぐらいに」と、メンタル面でも成熟した戦いをチームに課した。
1点の重みと選手の気迫――。
これこそが新生中日が目指す「らしさ」であり、今季のチームスローガン「強竜再燃」を果たせるか否かの重要なキーワードでもある。
それが、開幕戦からできたと谷繁は言ったのだ。当然のように、指揮官の想いは選手たちにも伝わっている。
「チームの進むべき道が見えたと思います」
ベテランの和田一浩は、いち早く中日の「らしさ」を感じ取っていたひとりだ。