オリンピックへの道BACK NUMBER
スキー各種目のエースの共通点。
“3度目の正直”で挑むソチ五輪。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2013/11/04 08:01
10月30日に会見に臨んだ、前列左から伊藤有希(ジャンプ)、石田正子、伊藤みき、藤森由香(スノーボードクロス)、後列左から伊東大貴、渡部暁斗、湯浅直樹(アルペンスキー)。
バンクーバーの雪辱を誓う、伊東と伊藤。
伊東にとってのバンクーバーは、ラージヒルで42位に終わったトリノの雪辱を果たすべき場であった。しかし、ノーマルヒルは15位、ラージヒルは20位、団体では5位。「トリノのように逃げる姿勢ではなかった」と思いつつも、「課題がたくさん残りました」と満足にはほど遠かった。
そして伊藤みき。楽しさが残ったトリノから4年、「表彰台を、金メダルを」と勝負に行ったバンクーバーで12位にとどまった。シーズン開幕前の膝の故障の影響も大きかったが、プレッシャーに負けたことも感じていた。その悔しさから、決勝のあと、すぐに、「ソチを目指します」ときっぱりと言った。
あれから彼らは、着実に成果を上げてきた。渡部は'11-'12年のシーズンはワールドカップ総合2位、'12-'13年シーズンは総合3位と、世界のトップクラスの一人になった。伊東は'11-'12年にワールドカップ初優勝をはじめ4勝をあげ、総合でも4位に入った。そして伊藤の昨シーズンの飛躍は、先に記したとおりである。
やはり、ソチに出場すれば3度目となる選手に、クロスカントリーの石田正子もいる。
「ワールドカップでしっかり成績を出して、ソチで成績を出せるという自信をつけて臨みたいです」
と語る石田は、バンクーバー五輪でクロスカントリーでは日本選手で過去最高の5位となった第一人者である。石田は「クロスカントリーをメジャーにしたい、もっと注目してほしい」という使命感とともに打ち込んできた。3度目のオリンピックへ向けて、強い決意を抱いていることだろう。
残り3カ月、スキー界の再起がかかる五輪へ。
選手たちはそれぞれの過程を経て、オリンピックを目指し、着実に成長を遂げてきた。残り3カ月余りでどう調整し、大会に挑むのか、大会でどのようなパフォーマンスを見せるのか、楽しみである。
そして彼らの成長は、スキー競技全体のレベルの向上にもつながる。
高梨沙羅が女子スキージャンプで注目されているとはいえ、'02年のソルトレイクシティ五輪のモーグルで里谷多英が銅メダルに輝いたのを最後に、日本のスキー競技はメダルを獲得していない。オリンピックでメダルが2大会続けてなかったことが、スキー競技全体の地位が低迷する一因であるともされた。
選手たちの闘志、オリンピックへかける思いは、スキー界の再起への戦いでもある。