野球善哉BACK NUMBER
パの天王山、ロッテが楽天に先勝。
トラブル続出の空気を変えた“雨”。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/11 12:35
首位決戦3連戦の初戦を快勝した伊東勤監督。パ・リーグのペナント争いは、まだ終わらせない。
あの雨がなかったら、どうなっていただろう――。
9月10日の楽天戦に快勝し、優勝への思いの強さを口々に語る選手たちの表情をみながら、そんなことを思った。
現在2位を行くロッテは、首位・楽天をゲーム差5で追いかけている(9月10日現在)。楽天に優勝マジック18は点灯しているが、まだまだパ・リーグのペナントレースは終わっていないと猛追する構えである。
だが、つい1週間前までのロッテはどん底だった。とても首位を追いかけるとは思えないひどいチーム状況だった。それが、この3日間で大きく変わったのだ。浮上のきっかけとなったのは、あの大雨だった。
西武には無情の、ロッテには幸運の「大雨」。
9月8日の西武戦。ロッテは2回表、ミスから大量4失点を喫してしまう。無死から西武の4番・浅村栄斗が中前安打、続く中村剛也の平凡な飛球の行方を荻野貴司が見失う。6番・秋山翔吾の中前適時打で1点。そのあと、先発の古谷拓哉がバント処理ミスでピンチを拡大すると、結局4点も失うことになってしまったのだ。
悪い流れを変えて前に進んでいきたい大事な時期の試合で、ミスによる大量失点。この試合に負けていれば、ロッテは最悪の空気につつまれていたはずだ。
しかし、西武にとっては無情の、ロッテには幸運の大雨が降り注いだ。
試合は降雨での中断後にノーゲームが決まり、翌日に持ち越された。ロッテの伊東勤監督は「投手陣のやりくりが難しくなった」と顔をしかめたが、仕切り直しの試合で再び先発した古谷が好投。二度目の正直とばかりに4-3で制する結果となった。
かくしてロッテは、連勝したまま10日からのパ・リーグの天王山を迎えていたのだった。
ロッテナインにとって、首位・楽天とのこの3連戦には並々ならぬ思いが詰まっていた。この連戦を落とせばパ・リーグのペナントレースの流れが決まってしまうということもある。それ以上に、この戦いから遡ること2週間前、敵地・Kスタ宮城に乗り込んだロッテは、楽天を追い上げるどころか、逆に3タテを食らってしまうという借りがあった。