野球善哉BACK NUMBER
パの天王山、ロッテが楽天に先勝。
トラブル続出の空気を変えた“雨”。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2013/09/11 12:35
首位決戦3連戦の初戦を快勝した伊東勤監督。パ・リーグのペナント争いは、まだ終わらせない。
コーチ、エース、そして4番がいなくなった。
伊東監督は、楽天相手の3連敗後、選手たちにこう声を掛けている。
「終わったことはしょうがない。次(10日)の(千葉での)楽天戦まで、首位の挑戦権を得るため、しっかり粘っていこう」
8月27~29日までのソフトバンク戦、同30日~9月1日までの日本ハム戦は、5勝1敗で乗り切った。伊東監督の激励に応え、チームは粘りを見せたかに思えた。
ところがそんな折、不運が続けてチームを襲ったのである。
投手陣を取りまとめてきた齊藤明雄コーチが9月2日に体調不良で休養。ここからチームに暗雲が立ち込め始める。
3日には、近日中の復帰が期待されていたエースの成瀬善久が二軍調整中に左肩痛を発症。今季の復帰が難しくなった。
さらに、前半戦の勝ち頭となっていた右腕・西野勇士が5日のオリックス戦でKOされると、6日には登録を抹消された。右肩痛の故障が癒えたはずだったが、身体が完全に回復しきっていなかったのだ。
同5日には、4番を務めていた今江敏晃が試合中に負傷。6日の西武戦を欠場し、7日には登録抹消されたのである。
チームはその間に3連敗。楽天にマジックが再点灯する始末で、ロッテの自力優勝は潰えていた。エースだけでなく4番も不在。先発陣はいつも序盤に崩れ、打線も沈黙するという試合が続いた。6日の西武戦では、今江に代わる4番に鈴木大地を置くなど苦肉の策を講じたが、光明は見えてこなかった。
伊東監督の改革により、息を吹き返したロッテ。
7日の西武戦。伊東監督は、ここで3試合1得点の打線にてこ入れの決断を下す。こういった場合には、思い切った起用しかないと指揮官は腹をくくったのだ。
1番に角中勝也を置き、4番には助っ人のブラゼルを置いた。
3番・井口資仁は固定したままだったが、5番にベテランのサブローを起用。鈴木を6番、今江の代役には、伸び悩む細谷圭を9番・サードで起用した。
この采配によって、かすかな光明がさすことになる。
0-0の投手戦の展開から6回裏に井口が左翼スタンドへのソロ本塁打。1点を先制すると、8回裏には2死から角中が三塁打で好機を作る。連続四球のあと、二死満塁から4番ブラゼルが2点適時打を放ち、貴重な追加点を挙げた。
「打線が湿っていたので、積極的に振っていける選手を1番に起用した」と伊東監督は、角中の抜擢をそう説明したが、角中が存在感を示し、新たな1~4番の打線が機能。この日先発した松永昂大が5回を零封して、もともと安定していた救援陣による完封リレーで連敗を止めた。