プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンCにペジェグリーニ色が浸透中。
プレミア奪還の鍵は、4人の新戦力。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byManchester City via AP/AFLO
posted2013/08/28 10:30
早速チームにフィットしはじめたヘスス・ナバス。逆サイドのシルバ、中央のナスリとのコンビネーションも上々だ。
開幕戦でナバスとフェルナンジーニョが早速先発。
4名とも、いわゆる「ビッグネーム」ではないが、ペジェグリーニが志向するポゼッション・サッカーに向いている上に、既存の主力を生かせる新戦力だ。開幕戦で先発した2名を例にとってみよう。
ナバスの持ち味は、右サイドを駆け上がるスピードだが、その背後にはパブロ・サバレタがいる。ニューカッスル戦では、攻撃意欲旺盛な右SBが、タッチライン沿いのオーバーラップはもちろん、ナバスが外に開いてマークを引き寄せる隙に、右インサイドを駆け上がる姿も見られた。また、サイドをえぐってクロスという、典型的ウィンガーの印象が強かったナバスは、逆サイドでフリーになっているダビド・シルバを見逃さず、度々、サイドチェンジを試みてもいた。
フェルナンジーニョは、ヤヤ・トゥーレの負担を軽減できる中央の新パートナーだ。昨季の相棒だったギャレス・バリーは、守備では機動力のなさ、攻撃ではパスを出す判断の遅さを露呈する場面が少なくなかった。その点、足も頭も回転の速いフェルナンジーニョであれば、トゥーレは安心して攻守の役割を分担できる。両センターハーフは、一方が留まり一方が上がるコンビネーションを繰り返しながら、開幕戦での中盤を支配した。
指揮官が「リーグ最強の戦力」と胸を張る攻撃陣。
そして、縦にも横にもボールが速く動くようになったチームでは、エディン・ジェコが、加入3年目にして、移籍金約42億円の価値を示し始めている。昨季までは、必要に応じて投入されるターゲットマンとしか評価されず、2年連続で売却対象とも噂されたが、ペジェグリーニは、就任早々から「キーマンの1人」とジェコを評して自信を与えた。精神面の前向きな変化は、プレシーズン中の4得点からも窺えた。ニューカッスル戦でも、相手GKの好セーブがなければ得点者として名を連ねていた。
だが、高評価の理由は、長身のセンターFWが持ち合わせる「オフザボールでの動きの良さ」にもあるようだ。ペジェグリーニのサッカーでは、パスのオプションを確保するために、目敏いスペースへの動きが欠かせない。
例えば、ニューカッスル戦での先制点。折り返しは相手DFに当たってシルバの頭に届いた恰好だが、中央でボールを持ったシルバの代わりに、ジェコが左サイドに開いてパスを受けたからこそチャンスが生まれた。続くチーム2点目では、逆に自身の背後のスペースへと動くセルヒオ・アグエロへと、バックヒールでラストパスを通してもいる。
そのアグエロは、ここしかないというコースにシュートを決めた。昨季は怪我でリズムに乗り損ねたマンCのエースは、プレシーズン中の調整も遅れ気味だったが、開幕に間に合った上、リーグ戦23得点で優勝に貢献した一昨季を思わせる、精力的な動きと正確なフィニッシュを披露した。
攻撃陣には、10分間ほどの交代出場でもゴールに迫った、ネグレドという最前線のオプション、そして、怪我で開幕戦を見送ったヨベティッチというセカンドストライカーもいるのだから、指揮官が「リーグ最強の戦力」と胸を張るのも当然だ。