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カーリング界の流れを変えた、
“ママ”アスリート・船山弓枝の再出発。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byTakaomi Matsubara

posted2010/11/24 10:30

カーリング界の流れを変えた、“ママ”アスリート・船山弓枝の再出発。<Number Web> photograph by Takaomi Matsubara

今季はトレーニングをしながら残りのチームメイトを人選し、来季から大会出場の予定。船山弓枝は「五輪だけじゃなく、成績を残す強いチームを作りたい」と意気込みを語った

ソルトレイクでの失敗によって身につけた平常心。

 その後結婚し、一児の母となって復帰を果たした今、思い定める目標はどこにあるのか。

 船山はまず、2度出場したオリンピックをこう振り返る。

「ソルトレイクシティ五輪のときは、精神面でも弱かった。あの大会では、すごく痛い思いがあったんです。初戦で敗れたのですが、あれは私の一投から始まってしまった。だからオリンピックのあと、メンタルトレーナーもつけて、メンタルの強化をしたんです。それがトリノで生きたと思います」

 メンタルの強化に取り組む選手は多いが、それでも大舞台で力を発揮できないことは多々ある。その中で、落ち着いたプレーができた理由を、重ねて尋ねる。

「なんでしょうね」

 少し考えたあと、こう答えた。

「4年間頑張ろうと思って青森に行って、この4年間は無駄にしたくないと思ったんですね。ソルトレイクシティと同じことを繰り返してはその4年間が無駄になってしまうという悔しさというか意地というか。それがきっと平常心につながったのかなと思います」

トリノで獲れなかったメダルを手にするために再度五輪へ。

 自身、納得の行くプレーをすることのできた船山だが、かなわなかった思いもあった。

「トリノで目標にしていたことが3つありました。結果を残すこと、カーリングを広めたいということ。そして、強い精神力で戦いたいということでした。その中の2つは達成できたと思います。でも成績には満足いかなかった。皆さん、よく頑張ったねとやさしい言葉をかけてはくれたのですが」

 だから、目標は確固としている。再びオリンピックへ。そしてやり残したこと、メダルを手にする。

 その過程は、子を持つアスリートとして第一線に立つ挑戦でもある。

「カーリング界でお母さんになって上を目指す選手はいなかったので、カーリング界の流れを変えることができたように思います。もちろん、私たちも成績を残さなければいけない。これで負けていたら大きいことは言えないですよね」

【次ページ】 平坦な道程ではなかった20年に及ぶカーリング人生。

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