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チーム設立ラッシュの女子カーリング。
なのに……ソチ五輪出場がピンチに!!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2010/12/01 10:30
結婚・出産後に復帰した船山弓枝(左)、小笠原歩(中)と若いメンバーの吉田知那美が新チームの設立を11月上旬に発表。北海道銀行が全面バックアップするという
小笠原(旧姓小野寺)歩、船山(旧姓林)弓枝の出産後の現役復帰。
トリノ・オリンピックでは、ふたりのチームメイトだったマリリンこと本橋麻里の新チーム結成。
トリノ、バンクーバーの両オリンピックではテレビの解説を務め、「Yes! Yes!」などの熱い解説で人気を博した小林宏氏がジェネラル・マネージャー(GM)兼監督に就任し、新チームを発足したチーム・フジヤマ。
日本の女子カーリング界はオリンピック以降も話題に事欠くことはない。なにせ企業スポーツが衰退していく日本で、小笠原・船山のチームには北海道銀行が、小林氏がGMに就任したチームには富士急がバックアップにつくなど、経済的な支援が得られるスポーツは今時珍しいのだ。
それだけカーリングという競技が日本人と相性がいいことを示しているし、女子カーラーの「好感度」が高いことが背景にある。
4年後のソチ・オリンピック出場に早くも黄信号が!?
これだけ国内では話題が豊富な女子カーリング界だが、実は4年後のソチ・オリンピック出場に黄信号が灯った。
11月23日まで韓国で行われたカーリングのパシフィック選手権で、日本(チーム青森)は準決勝で韓国に敗れて決勝進出を逃してしまい、結果的に3位に終わった。
実はこの大会、上位2チームには来年3月にデンマークで行われる世界選手権出場の切符が与えられるという代表選考会を兼ねており、日本は3位になったことでそれを逃してしまっていたのである。世界選手権に駒を進めたのは優勝した韓国と、準優勝の中国であった。
これまでの例で行けば、五輪の出場権は世界選手権の過去3年分の総合ポイントによって決まる。もちろんソチに向けて出場権決定システムそのものが変更される可能性もまだ残されてはいるが、少なくとも現行の条件では、日本はその3回しかない機会のうち貴重な1回を逃してしまっているのだ。
バンクーバーの出場権も合計2回の世界選手権出場でつかんだものだったが、2008年の大会で奇跡的に4位に入る好成績を収めたからこそ、出場につながった。
現状では2012、2013年の世界選手権に是が非でも出場し、上位に食い込まないとソチ・オリンピックは出場すらかなわず、せっかく盛り上がった機運に水を差すことになりかねない。
だが冷静に見ていくと、来年のパシフィック選手権で中国、韓国のいずれかを倒し、なおかつ2012年の世界選手権でメダルを争うのは、かなりハードルが高いと言わざるを得ない。その意味で私は、バンクーバー・オリンピックが終わったばかりの年ではあるが、4年後のオリンピック出場について「黄信号」と書いたのである。