プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンU対チェルシーはスコアレスドロー。
ルーニーは残留へ……そして香川は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2013/08/27 12:10
現在27歳、フットボーラーとして充実の時期を迎えているルーニー。国内最高の才能が、移籍問題で輝きを削がれるのはあまりにも惜しいことだ。
ルーニー残留が濃厚で、香川には向かい風。
対するマンU指揮官は、試合後に「始めから(移籍は)ないと言ってきただろう」とコメント。ルーニー放出を否定するセリフは同じでも、その表情には以前とは違う余裕が感じられた。
もちろん、ポーカーフェイスのモウリーニョが、ダメ元の第3弾オファーに打って出ることは考えられる。来年1月、或は来夏まで獲得を先送りにするだけという可能性は高い。
だが、モイーズが好むハードワークとゴールへの脅威を兼ね備えたトップ下を、当人とファンも望む状態でこのまま確保できる可能性が増した事実は、(土壇場でトッテナムにギャレス・ベイル獲得をオファーしたとの噂はあるものの)補強が難航しているマンUにとっては追い風となる。
反面、トップ下を争う香川真司にとっては向かい風だ。
ルーニーが残留を選び、1トップの交代役ではなく、(この試合のラスト15分弱は2トップ気味の位置にいたように)セカンドストライカーとして重宝されるとなれば、左サイドで常時出場を狙うしかない。だが、そこでは既にウェルベックが有利な立場にある。
1対1が得意とは言えず、強度アップに取組中の香川に対し、ウェルベックはモイーズ体制では大前提の守備面で生きる強靭なフィジカルと、いざとなれば自力でサイドを突破できるスピードを備えた競争相手なので、ライバルとしては相当な難敵となるはずだ。
意義あるドローだが、香川の立場は再び振り出しに。
心の拠り所を探すとすれば、それは、新監督が得点面での貢献に関しても、2列目要員に高いハードルを設定している点だろうか。
右サイドのアントニオ・バレンシアが60分強でピッチを去ったのは、マイボール時の効き目が不十分だったからだと思われる。ボール奪取を繰り返していたバレンシアは、フルタイムをこなしていればMVP候補となって然るべき献身さだった。ところが、カウンターで走っておきながら、最後のクロスが不正確だった58分のシーンのように、肝心のアタッキングサードに到達すると存在感が薄れてしまった。その相手エリア付近でのプレーを身上とする香川は、トップ下での交代出場であれ、左ウィンガー気味のサイド起用であれ、ピッチに立つチャンスを得た場合には、貪欲にゴールに絡んでアピールを続けなければならない。
両チームともに守備面での汗と力の賜物と言うべき、今回のスコアレスドロー。チェルシーは、敵地での意義ある1ポイントを手にロンドンに戻る。ホーム陣営も、1ポイントと共に「マンUのルーニー」を取り戻した感がある。
そして、香川のマンUキャリアは、移籍直後の昨夏と同じ振り出しへと戻った。