プレミアリーグの時間BACK NUMBER
マンU対チェルシーはスコアレスドロー。
ルーニーは残留へ……そして香川は?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAP/AFLO
posted2013/08/27 12:10
現在27歳、フットボーラーとして充実の時期を迎えているルーニー。国内最高の才能が、移籍問題で輝きを削がれるのはあまりにも惜しいことだ。
マンU攻撃の要所では、すべてルーニーが絡む。
常人であれば、本来のプレーができなくても不思議ではない状況だが、トップ下に入ったルーニーは、流石の90分間を披露した。
マンUのシュートの内、枠内に飛んだ3本は、いずれもルーニーが放っている。
77分には、クリーンヒットしたミドルで、ペトル・チェフに難しいセーブを強いた。両軍通じての最大のチャンスもルーニーが演出したものだ。ウェルベックに通った56分のスルーパスは、完全にフリーな状態を作り出すものだった。
スタジアムでの温かい応援で、ルーニーの心も残留へ!?
移籍を希望していても、一度ピッチに立てば全力を尽くす姿勢は、30分間の途中出場で2アシストをこなした開幕戦でも明らかだった。
8月17日のスウォンジー戦で、ルーニーは、パスとDFを引き付ける動きで、 自身からエースの座を奪ったロビン・ファンペルシのゴールをお膳立てし、絶妙のスルーパスで2列目レギュラーを争うウェルベックのゴールを演出している。噂のチェルシーを相手にした今節では、立ち上がりは相手サポーターから「ルーニー」コールが起こる環境でも、心が乱れるどころか、逆に勝利への意欲と集中力を増しているようでさえあった。
ルーニーは開始早々の5分から、相手ペナルティエリア付近で、ボールを持った左SBのアシュリー・コールとテリーを、立て続けに追い回した。その3分後、中盤で見せたウェルベックとの連係では、フットワークの軽さが際立っていた。ハーフタイム直前、ダイレクトで狙ったファンペルシへのスルーパスからは頭のキレも窺えた。圧巻は77分の一場面。スペースに走り込んだ相手MFラミレスを追走し、ゴールライン際でタックルを仕掛けてボールを奪い取ると、即座に立ち上がってカウンターの起点となった。スタンドからは、マンUファンによる本物の「ルーニー」コールが沸き起こった。
アウェイでの前節では、得点に絡みながらもゴールを祝うチームメイトたちの輪には加わらなかったルーニー。この試合では無得点に終わったが、ホームの観衆の目前で同志として尽力し、同志として拍手喝采を浴びた体験を経て、心はマンU残留へと大きく傾いたかもしれない。獲得を望むチェルシー指揮官の発言も、対戦前の「最後まで諦めない」から、試合後には「本人が残留を望むのならば手を引く」へと一変した。