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大儀見優季がチェルシーで好発進。
「W杯王者」という期待を背負って。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byGetty Images

posted2013/08/25 08:01

大儀見優季がチェルシーで好発進。「W杯王者」という期待を背負って。<Number Web> photograph by Getty Images

加入直後から試合に出場し、早くも信頼をつかみつつある大儀見。なでしこジャパンで培ったポゼッションへの意識と、ドイツで身に着けた力強さで、どこまでチームを引き上げられるか。

 プレミアリーグが開幕する2週間前、イングランドでは、1人の日本人選手が既にトップリーグのピッチに立っていた。4月に開幕した女子スーパーリーグを戦う、チェルシー・レディースの大儀見優季だ。7月に入団が決まった日本代表FWは、今季第8節に当たる8月4日、ドンカスター戦でのデビューを勝利(4-0)で飾った。

 チーム合流直後、2度のチーム練習だけで先発フル出場という事実から、寄せられた期待の大きさが窺える。「W杯王者が加入」と獲得を発表したチェルシーは、「してくれた」と続けてもおかしくはなかった。まだ「完成品」ではない26歳の大儀見だが、世界王座に就いた代表でのキャップ数は100を越えている。クラブレベルでも、古巣のポツダムで、女子のブンデスリーガとCLでの優勝を経験し、国内得点王の個人タイトルをも獲得済みだ。

強い向上心を抱いて、“弱小”チェルシーをあえて選択。

 これに対し、チェルシーはトップリーグでの優勝歴がない。イングランドにおける女子の強豪と言えば、3年前までの女子プレミアリーグ時代から通算9連覇中のアーセナル。伝統のライバルとしては、バーミンガムやエバートンが挙げられる。今季は、2年連続最下位から変身したリバプールが優勝を争っているが、2年連続6位のチェルシーは、大儀見の移籍が決まった時点で、やはり8チーム中の4位だった。それだけに、契約成立と聞いた時点では、日本人チェルシー・ファンとしての嬉しさに混じり、新天地としては物足りないのではないかとの懸念も筆者の中にあった。

 もちろん、当人の中に迷いなどあるはずはない。デビュー戦2日前の入団会見で、「なぜチェルシーだったのか?」と尋ねると、7番のユニフォームを手に現れた新FWは、凛とした表情で言った。

「他からもオファーはありましたが、このチームの方が、自分の成長、自分の目標のイメージにつながる環境だと考えました。中盤の選手が持っているようなプレーを身につけたい。自分の良さはポストプレーだけではないですし、パサーとしての幅も広げていきたいから。プレスも速いイングランドのピッチで、正確に発揮できる技術なども磨きたい」

【次ページ】 デビュー戦からチームに溶け込み、存在感を発揮した。

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