プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョの第2期は一味違う!
チェルシーの攻撃志向に膨らむ期待。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2013/08/12 10:31
タイ・バンコクでのアジアツアー中の練習で指示を出すモウリーニョ。7月のアジアツアーではタイ、マレーシア、インドネシアの3カ国で試合を行なった。
いまだ補強が進まないFWではあるが……。
攻撃をリードするセンターFWは、補強のないまま8月を迎えた。既存の1トップ候補は、フェルナンド・トーレス、デンバ・バ、ロメル・ルカクの3名。調子の良さでは、アジア遠征で3試合4得点のルカクがずば抜けている。昨季、レンタル先のウェストブロムウィッチで、リーグ戦17得点を記録した20歳は、フィジカルとスピードが共存するプレミアのストライカーに成長して、チェルシーに帰ってきた。とはいえ、国内外でタイトル獲得を狙うチームの得点源となると話は別だ。
実績と経験値では、29歳のトーレスが別格だ。モウリーニョは、「フェルナンドの持ち味を生かせる戦い方」をする用意があるとも言っている。対戦相手にドン引きがない上位対決などでは、ショートカウンターから、トーレスが好む最終ライン裏へのパスを多用し、縦に速い攻撃を意識するのだろう。経験豊富な「ビッグゲーム要員」としての起用が想定される、35歳のフランク・ランパードとは、リバプールでのスティーブン・ジェラードとのコンビのような、中盤と最前線を結ぶホットライン形成も想像できる。
本格的な唯一の新FW候補、としてルーニー獲得を目論む。
しかし、基本的には攻撃に人数を割く心構えさえある現状では、狭いスペースでも仕事をする力と技を持つストライカーが望ましい。
そのターゲットはウェイン・ルーニー。プレミア実績豊富な27歳は、モウリーニョが「本格的な唯一の新FW候補」と発言しても、エディンソン・カバーニにPSG入りを選ばれた負け惜しみではないと受け取れる。
マンUでの昨季も、アウトサイドや中盤でも起用されながら合計16得点。今季から指揮を執るデイビッド・モイーズは、「ロビン・ファンペルシのバックアッパー」を示唆する発言をしているが、まだまだ「賞味期限切れ」ではない。
チェルシーの新監督は、かつて、選手を「卵」、チームを「オムレツ」に例えたことがある。前回のチェルシー時代に終止符が打たれる直前のことだ。
「オムレツの出来は卵の品質しだい。1等級から3等級まで売られているが、高級な素材を使えば、より良いオムレツが作れる。逆に1等級の卵がなければ料理は難しい」
これは、オーナーの意思による新戦力と、オーナーが望むスタイルを押し付けられた、当時のチーム事情への反論だった。再び就任したチェルシーでは、オーナーと志向性が一致した指揮官にとって、納得のいく1等級の卵が数多く揃っている。マンUからの「国産1等級」購入は、3度のオファーを断られても、移籍を望むルーニー本人の意思もあり、獲得に近付いていると見られる。相思相愛のチェルシーに戻った「幸せなる者」が、「愛情」を込めて作り上げる、攻撃的なチェルシーの出来に期待は膨らむ。