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<2013女子プロゴルフ展望> 古閑美保が語る 「女王・全美貞に立ち向かう期待の若手たち」
text by
吉井妙子Taeko Yoshii
photograph byTaku Miyamoto
posted2013/03/07 06:01
全美貞(Jeon Mi-Jeong)'05年のツアー参戦以来、圧倒的な技術力を武器に通算21勝を挙げている。
“スポーツ遺伝子”を受け継いだ木戸愛は期待大。
女子ゴルフは、意外と精神的負荷の高いスポーツなんです。選手たちの多くは、生理不順に悩まされているし、試合前になると顔にブツブツだってできます。ロッカーで具合が悪くなってしまう選手もいます。私も眩暈に苦しんだこともありました。
トップコンディションを維持できる期間が短いからこそ、フレッシュな選手に頑張って欲しいんですよね。若いとそんなことに悩まされること無く、勢いでいけますから。'07年のことですが、絶対的に強かった不動さんを、21歳だった上田桃子が破りました。若さは、経験をもねじ伏せることが出来るんです。
そういう意味では、昨年初優勝した木戸愛は期待大ですね。父は元プロレスラーの木戸修さんでスポーツ遺伝子は受け継がれていると思うし、何よりビジュアルがいい(笑)。172cmの長身から振り下ろされるスイングはダイナミックだし、スタイルも日本人離れしているから、見ているギャラリーは楽しいかも。
笠りつ子の課題は、“シーズンが始まってからの時間の使い方”。
20歳の野村敏京も伸びそうですね。“ぶんぶん丸”と渾名を付けられるくらいスイングは荒いけど、その荒さが魅力。枠に填まらないところに潜在能力を感じるんです。
同郷の後輩である笠りつ子には是非頑張って欲しい。1月には彼女の自主トレにも付き合ってきました。りつ子は一昨年、昨年と1勝ずつ挙げていますが本来ならもっと勝ってもいい選手。ただ、1年間を通しての闘い方がまだ分かっていない。
序盤は自主トレの貯金があるから誰でも調子はいいんです。問題は後半。シーズンが始まると毎週試合が続くので、オフの月曜、火曜をいかに過ごすかが大切になってきます。この休みを、身体の手入れやトレーニング、練習に当てている選手は後半も崩れません。試合は経験の蓄積にはなりますが、精神も体力も磨り減ってしまう。りつ子は、“シーズンが始まってからの時間の使い方”という課題をクリアしたらもっと勝てるようになるはずです。
あと数年経てば、中国の選手たちも日本女子ツアーに参戦してくるはずです。でも、私は歓迎すべきことだと思っています。日本女子ツアーのレベルの底上げが出来れば、日本人選手も今以上に揉まれるし、タイトルは絶対に海外勢に渡したくないと頑張る選手も出てくるでしょう。互いに鎬を削り、日本が米女子ツアーよりレベルが高くなったら、今以上にゴルフが面白くなると思うんです。