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ノルディック世界選手権プレビュー。
“道具”の差にめげず奮闘する選手達。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKYODO
posted2013/02/11 08:01
2月2日、来年の五輪の舞台であるソチでのワールドカップの女子距離複合で力走する石田正子。今季は1月のフランス・ラクルーサでの女子10kmでの4位が最高。年明けになってしり上がりに調子を上げている。
日本の用具スタッフの数は「海外の強豪の10分の1」。
めまぐるしいルール変更は、技術と同時に、道具の開発能力を問うことになる。
その面では、豊富な資金、それに基づく開発環境を持つ欧州勢が日本を上回るのが現状だ。練習や大会でだめならすぐに新しいスーツを試すことができる彼らに対し、日本チームはそういうわけにはいかない。
例えば、クロスカントリーならワックスが大きな影響をおよぼす。
クロスカントリーのコースは上りがあれば下りもある。単純に言えば、上りでスキー板のブレーキがかかりやすく、下りでは滑る状態であれば理想的だ。そのためのポイントが、板に塗るワックスなのである。
専門のスタッフが雪質や天候を読み取り、何百と種類がある中からワックスを選び、どう塗るかを判断する。それはF1に例えて言うなら、路面状況にあわせて数種類ある中から使用するタイヤを選択する際に、判断を誤ればタイムが大幅に落ちるのに似ている。
そしてワックスのスタッフの数は、以前、ナショナルチームにいたコーチによると、「日本は海外の強豪の10分の1程度」しかいないという。コーチも含め、少ない人数で準備にあたらざるを得ないのだ。
世界トップレベルの日本人選手には、どんな選手がいるのか?
そうした面で遅れを取ってきた日本だが、これまではなんとか食い下がろうとしてきた。
むろん、選手もそうだ。
世界選手権でまず注目されるのは、クロスカントリーの石田正子。
年末にはワールドカップのスキーアスロンという種目で5位、1月には10kmクラシカルで4位と、これらの種目では順位、内容ともに最高の走りを見せている。クロスカントリーで日本勢は、世界選手権の表彰台に上がったことがないが、初メダルの快挙の期待も高まる。
ノルディック・コンバインドには昨シーズンのワールドカップ総合2位の渡部暁斗がいる。