昨年の数字を参考にできなかったゆえに強かった日体大。

　反対に日体大の復路の選手たちは、入りの3キロを落ちついて走り、後半に余力を残す走りをしていた。東洋大が前半でタイム差を詰めても、後半になって引き離し、戦意を喪失させていったのである。

　復路を走った東洋大の選手が一様に苦しい表情を浮かべて走っていたのは、おそらくこの駆け引きから生まれたメンタリティが大いに影響していたのだと思う。

　対照的に日体大は、前回のタイムと自分たちを比較する必要がなかった。

　昨年の箱根駅伝における19位という結果――名門にとってのこの汚点は唾棄すべきものだったし、データ的にもまったく参考にできなかった。去年の自分たちより強くなっているという自信だけが、復路の選手の走りを支えたのである。

　自分たちの走りに集中すること、それが20キロを超える箱根ディスタンスにおいては、重要だと思い知らされた2日間だった。