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<箱根駅伝> つながらなかった襷。~悲劇のランナーたちのその後を追う~
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byYuko Torisu
posted2013/01/01 08:00
あの冬の箱根は、とりわけ印象的だ。勝者ではなく、
敗者の崩れ落ちる姿が網膜に焼きついている。
うつろな目、半開きの口もと。何度転んでも立ち上がり、
襷をつなごうとする姿──。襷はなぜ、つながらなかったのか。
途中棄権を余儀なくされた3人のランナーの、その後を追った。
好評発売中の雑誌Number Do『体が変われば人生が変わる!?』より、
特別公開します!
敗者の崩れ落ちる姿が網膜に焼きついている。
うつろな目、半開きの口もと。何度転んでも立ち上がり、
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JR清水駅前の雑踏に、ジャージ姿のサラリーマンがすっくと立っている。
スリムな体型は現役当時のまま。山梨学院大のエースとして鳴らした中村祐二も、すでに不惑の年を迎えているはずだった。
「今年で42です。学生の頃と比べて、むしろ体重は減ってます。52kgしかないんですよ。ちょっと肺を痛めましてね」
何度目かの転職先である現在の会社は、経営再建のまっただ中。
造船会社で総務課長を務める中村は、ややかすれた声で言った。
現役はとうに引退した。今の会社は何度目かの転職先だ。会社更生法の適用を受け、経営再建のまっただ中にある。
苦労も多いはずだが、表情はむしろ明るい。
「今なら何でも話せますよ」と笑う。
1996年、1月2日。往路4区を走る中村の右足に、どんな異変が生じていたのか。
右足の異変を、日本代表だった中村祐二は「天罰」と受け止めた。
社会人を経て大学に入り直した遅咲きのランナーは、その前年、世界選手権にマラソンの日本代表として出場していた。実力は図抜けていたはずだが、後続のランナーに次々と抜かれていく。実況アナが、思わず叫んだ。
「世界の中村が止まっています!」
上田誠仁監督の説得を振り切り、中村はその後も走り続けるが、顔をゆがめ、足をひきずるなど、もはやまともな状態でないことは誰の目にも明らかだった。
よもやの最下位。足の状態はひどくなるばかりで、見かねた審判長からリタイアを勧められ、12.4km過ぎで襷は途絶えた。
リタイアという事実を、中村は当時、どのように受け止めたのだろう。
「神さまからの天罰じゃないかって」
思わず聞き返す。天罰ですか?