Jリーグ万歳!BACK NUMBER
現地の宇佐美サポとの会話から――。
ドイツで再発見したJリーグの真価。
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph byAFLO
posted2012/10/27 08:02
スピードと技術を武器に、ドイツでも独特の存在感を放つ宇佐美。そのスタイルのベースがJリーグで培われたことを、日本サッカーは誇っていい。
サッカー日本代表の現在地を測る絶好の機会となった10月16日のブラジル戦(ポーランドで行なわれ0-4で敗戦)から、そのままドイツに流れてブンデスリーガを中心に取材している。欧州滞在10日目となった24日は、ドルトムントで行われたチャンピオンズリーグD組「ドルトムント対レアル・マドリー」を取材。いや、正確には「申し込み過多」という理由で取材申請を受け入れてもらえなかったから、取材ではなく観戦と言ったほうが正しい。
世界最高の観客動員数を誇るドルトムントのこと、もちろん試合の直前になって正規のルートからチケットを購入するのは不可能に近い。だから、とりあえずはジグナル・イドゥナ・パルクに足を運び、いわゆるダフ屋からチケットを購入しようと決めていた。滞在先のホテルからわずか40分のところにレアル・マドリーが来るのだから、見ない手はない。
「どんな試合か分かってるのか? ガンバ大阪じゃないんだ!」
最寄駅を出てスタジアムに向かう道すがら、彼は勝手に歩み寄って来て「チケット持ってるか?」と話し掛けてきた。「いくら?」と聞いて始まった交渉で歯がゆかったのは、最終的に定価の倍額以上を支払わされたことではなく、値下げ交渉を受け付けまいとする彼が言い放ったひとことだった。
「おい、この試合がどんな試合か分かってるのか? レアル・マドリーだぜ! ガンバ大阪じゃないんだ!」
そんなことは百も承知だが、分かっていることをズバリと言われることほど腹の立つことはない。だからこちらも根負けせず、結局大幅なプライスダウンに成功したまでは良かった。しかし「ガンバ大阪じゃないんだ!」というひとことは、思いのほか耳に残った。
果たして、遠くドイツの地でチケットを売りさばくダフ屋の彼が「ガンバ大阪」を知っていることは、「Jリーグの認知度向上」という意味でポジティブに解釈していいのか、それとも、たとえ正論だとしても「ガンバ大阪じゃないんだから」という言葉に反発すべきか。
今回の取材を通じて感じているのは、どちらかと言えば後者の思いである。
結論はこうだ。ブンデスリーガは確かに欧州4大リーグの一つに数えられるトップリーグだが、日本人選手が通用する、あるいは特筆すべき活躍を示すことができるのは全く不思議ではない。ピッチ内にあるJリーグとブンデスリーガの差に、ネガティブな要素は一切ない。