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「あれを見て裕毅はF1を目指せると…」父が確信した角田裕毅のレッドブル・ジュニア時代…片山右京も絶賛のドライビング「車が泳いでいるようだ」

posted2025/06/24 17:02

 
「あれを見て裕毅はF1を目指せると…」父が確信した角田裕毅のレッドブル・ジュニア時代…片山右京も絶賛のドライビング「車が泳いでいるようだ」<Number Web> photograph by Nobuaki Tsunoda

競技スキーやマウンテンバイクのダウンヒルの経験があり、ジムカーナでも活躍してきたツ角田裕毅の父・信彰氏(右)「裕毅とは友達のような関係ですね」

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生島洋介

生島洋介Yosuke Ikushima

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Nobuaki Tsunoda

 幼い頃からカートの運転は抜群にうまかった。それでも息子が世界最高峰のドライバーになるなんて、想像すらしていなかった。ところがレッドブル傘下のF3マシンを操る姿を見て、考えを改めた。迎えた2020年のF2最終戦、F1昇格まであと一歩に迫った角田裕毅は窮地に立たされていた。そのとき父・信彰氏は何を思い、遠いバーレーンからの吉報を待っていたのか。
 発売中のNumber1122号に掲載の〈[ルーツを探る(2)F2&F3時代]父が振り返る「F1に手が届いた夜」〉より内容を一部抜粋してお届けします。

「レッドブル・ジュニア」に抜擢

 2018年10月3日、日本GPを週末に控えた水曜日だった。角田信彰は息子・裕毅を連れて立川のセレクトショップへ向かうと、フィナモレのシャツにPTのパンツを一緒に選んだ。チャーチのチャッカーブーツに合わせて、ベルトもスウェード。重要人物との面談に臨む戦闘服だった。

「いまから(ヘルムート・)マルコさんと(クリスチャン・)ホーナーさんに会いに鈴鹿へ来なさいと連絡があって。さすがにTシャツ、短パンじゃまずい。オーストリア人とイギリス人に対峙するなら、イタリアがいいかなと思ってね」

 突然の電話は、直前にハンガロリンクで行われたレッドブルのF3合同テストを受けてのものだった。日本から参加した角田はみるみるタイムを伸ばし、その時点で「FIA F3ヨーロッパ」のシリーズポイントでトップだったダン・ティクタムをも凌ぐ最速ラップを記録。それまでF3マシンに乗ったのは国内での2度のテストだけ、という驚異の適応力も評価された。

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 面談を経て、若手育成プログラム「レッドブル・ジュニア」に抜擢された角田は、翌年から拠点をスイス・ローザンヌに移した。F1のトップチームの一つであるレッドブルは、有望な若手ドライバーを早い段階から発掘し、F2やF3といった下位カテゴリーを通じて育成するシステムを築いている。マックス・フェルスタッペンやダニエル・リカルドといったトップドライバーが育ったジュニアチームで、才能と将来性が認められた者だけが招かれる狭き門だ。

「裕毅はF1を目指せる」という確信

 毎戦2レース開催の全8戦で争う2019年のFIA F3参戦が決まった。所属先は下位チームのイェンツァーになったが、角田はシーズン序盤から印象的な走りを見せた。第2戦フランスのレース1では、27番グリッドから猛烈な勢いでオーバーテイクを重ねて7位入賞。さらにエンジニアとのマシン作りが進んだシーズン後半に入ると、第6戦ベルギーのレース2で初めて表彰台に立った。信彰はこう振り返る。

「その次のモンツァ(イタリア)のレース1で、裕毅が4位でゴールしたんですよ。トップチームのプレマの3台が上位を独占したドライコンディションのレースでしたけど、うち1台がペナルティで結局3位に繰り上げとなったんです。さらに翌日のレース2では、ウエットから始まる条件も活かして初優勝した。あれを見て初めて、裕毅はF1を目指せると思いました」

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