プロ野球亭日乗BACK NUMBER
結局は巨人の内輪もめなのか……。
清武代表の告発に正義はあるか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShiro Miyake
posted2011/11/15 11:35
清武代表と同席した吉峯啓晴弁護士は「球界で重要な立場にある球団の企業統治、コンプライアンスを最高権力者が破った。(中略)文科省も無関心ではおれない問題」と会見場所の理由を説明したが、文部科学省競技スポーツ課では「何の連絡もないし、企業の内紛では?(中略)指導に乗り出すつもりはない」としている
清武代表の“暴挙”の裏には隠された事情があるのか?
しかし、なぜ清武代表がここで反旗を翻したのか……。もちろん、一度決定したコーチ人事を「不当な鶴の一声」でひっくり返されたことへの怒りもあるはずだ。そして今年の6月に就任したGM職をないがしろにされ、その職を追われる怒り、無念さもあるだろう。
ただ、清武代表とて読売新聞出身の人間である。渡邉会長の専制君主的な会社経営や発言、また懲罰と昇進を利用した人事によるコントロールなどは十分に織り込み済みだったはずである。
それだけにこの“暴挙”の裏には、何かまだ清武代表をここまで駆り立てた別の事情があったのでは、という推察もできるような気もする。
単なる内輪もめで日本シリーズを矮小化した罪は重い。
しかし、である。
この巨人の内乱は、あくまで清武代表vs.渡邉会長のケンカでしかない。裏では江川助監督の交渉が進み、岡崎ヘッドコーチの契約の問題など清武代表にはタイムリミットがあったかもしれない。それにしても、プロ野球は最大イベントである日本シリーズが始まる前日であり、結果的に騒動はシリーズ第1戦を押しのけてスポーツ紙の1面をほぼ独占する形となってしまった。
「シリーズ出場の当該球団は清武代表と渡邉会長を威力業務妨害で訴えたら勝てるのではないかと思うほどです」
これは元巨人担当の知人からきたメールだった。プロ野球にかかわる人間ならば、冗談ではなくまさにそんな気分にさせられる騒動である。
「球界のため」「選手のため」とは、ただ巨人のためだけなのだろうか。ましてや、この騒動に巻き込まれた原監督をはじめ岡崎ヘッドコーチやOBの江川氏、そして球団職員の中にも、とんだとばっちりを受けている人間もいるはずだ。
いま、これだけの人を巻き込んでも納得させるだけの論は、ここにはない。