プロ野球亭日乗BACK NUMBER
結局は巨人の内輪もめなのか……。
清武代表の告発に正義はあるか?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byShiro Miyake
posted2011/11/15 11:35
清武代表と同席した吉峯啓晴弁護士は「球界で重要な立場にある球団の企業統治、コンプライアンスを最高権力者が破った。(中略)文科省も無関心ではおれない問題」と会見場所の理由を説明したが、文部科学省競技スポーツ課では「何の連絡もないし、企業の内紛では?(中略)指導に乗り出すつもりはない」としている
渡邉会長は清武代表の「取締役忠実義務」違反を指摘。
これに対して翌12日には、渡邉会長が反論の声明文を発表。
清武代表が大王製紙やオリンパスを引き合いに「会社の権力者がコンプライアンスや内部統制を無視して球団人事に口を出した」と批判したことに対し、「両社は刑事犯罪的事案であり、巨人軍の人事とは次元がことなる」として、清武代表の批判を「まことに悪質なデマゴギー」と指弾。1度きまった岡崎ヘッドコーチを覆して江川氏を起用しようとした人事に関しては、「原君(原辰徳監督)から提案されたものでヘッドコーチではなく助監督として考えていた」と経緯を説明した。その上で「構想段階ゆえの企業機密にもかかわらず会見で公表され、直ちに実現することが困難になった。これは会社法355条の『取締役忠実義務』違反に該当する」と反論した。
また清武代表個人に対しては、「読売新聞内部や巨人関係者から『尊大になった』『決断力がない』などとの内部批判もありGMは適任ではなかった」などとこき下ろした上で、「今後は本人の反省次第。現時点ではただちに処分を求めるつもりはない」と結んでいる。
原監督以下、現場サイドと対立していた“ミニナベツネ”。
この反論文に、同日の深夜零時過ぎには清武代表が再反論の文書をマスコミに配布。
「最も重要なのは渡邉会長が10月20日に桃井オーナーと私からコーチ人事等について報告を受けたことをお認めになったこと」とし、その後の囲み取材で「オレは報告を聞いてない」と明言したことは虚偽の事実を述べたことになるとした。また、原監督が直接会長に直訴したということも信じることはできないなどと主張した。
清武代表は2004年の代表就任以来、育成制度の創設などで手腕を発揮し、渡邉会長の評価も高かった。しかし、一方で強いフロントを目指した強引な手法で、ここ数年は原監督との関係はこじれにこじれていた。外国人選手の獲得や補強面、またコーチ人事でもフロント主導で現場の意向がまったく反映されないケースも目立ち始めていた。また、球団内外でそのワンマンぶりは“ミニナベツネ”といわれ渡邉会長の専横ぶりと比較されることもあったほど。強引な手法や強面な発言に反発も多く、渡邉会長が指摘するように球団幹部からの内部告発が読売本社に届いていたのも事実だった。
こうした背景の中で2年連続で優勝を逃し、その大きな要因として外国人獲得の失敗がクローズアップされたことが、同代表の立場を一気に危ういものとしたわけだ。