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日本ハムが繰り返す“負の歴史”。
梨田監督退任報道で考えたこと。 

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNaoya Sanuki

posted2011/09/07 12:20

日本ハムが繰り返す“負の歴史”。梨田監督退任報道で考えたこと。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

今季、ソフトバンクと共に“2強独走”態勢を築いてきた日本ハムだが、梨田監督の退任報道後に失速し、9月6日には今季ワーストタイの5連敗。ダルビッシュでも負の流れを止めることはできなかった

最大の功績は機動力を駆使したヒルマン野球の継承。

 育成面も評価できる。投手だった糸井嘉男が野手にコンバートした後、伸び悩んでいたところを積極的に起用し、リーグを代表する選手へと成長させた。中田翔にしても、入団当時こそ厳しい言葉を投げかけるシーンも多かったが、打者として成長したことを認めると主力として起用し、今季は4番に抜擢。中田は、打点ランキング上位に位置するなど中軸らしい働きを見せ、指揮官の期待に応えている。

 そしてなにより、日本ハム・梨田監督の功績は、バントや盗塁を駆使した機動力野球で結果を残した、前任のヒルマンの野球を継承したところにある。

 近鉄時代の梨田監督は、中村紀洋やローズら長距離打者が多くいたこともあり、どちらかというと大味な野球をしていた。日本ハムの監督就任会見でも、「のびのびとプレーしてほしい」と語っていたこともあり、札幌ドーム移転前の“ビッグバン打線”を再構築するのではないか? という怪訝の声もあったが、梨田監督はそれをしなかった。

チームを自分の色に染めない、梨田監督の指導スタイル。

 近鉄、日本ハムでの指揮を通じて感じることは、梨田昌孝という監督は器用である、ということだ。“いてまえ打線”として長年、攻撃重視の野球をしている近鉄然り、日本ハムでも日本一を掴んだ機動力野球を無理に変える必要はない。両チームでリーグ制覇を成し遂げていることからも、梨田監督の、自分の色にチームを染めずに既存の戦術に適応した指導スタイルは間違ってはない。むしろ、正しいとさえ言えるだろう。

 現に、指揮官が変わろうとも一貫した野球スタイルを持ち、安定した強さを保持しているチームがある。それは、中日だ。

【次ページ】 Aクラスを維持する中日の安定した強さの秘密とは?

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