スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
ジャンプ日本代表に謎の空白世代?
経済不況がスポーツ界に残した爪痕。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2010/01/20 10:30
1月16日に札幌・大倉山ジャンプ競技場で開かれたノルディックスキー・ジャンプのW杯第13戦。バンクーバー五輪日本代表の伊東大貴(雪印)が3位に入賞し、今季2度目となる通算4度目の表彰台に上った
バンクーバー五輪のジャンプの代表が決まった。
選手名 | 年齢 | 所属 |
---|---|---|
葛西紀明 | 37 | 土屋ホーム |
岡部孝信 | 39 | 雪印 |
伊東大貴 | 24 | 雪印 |
栃本翔平 | 20 | 雪印 |
竹内択 | 22 | 北野建設 |
今回、全日本スキー連盟の代表選考期間は当初、1月6日までのはずだったが、10日のコンチネンタル・カップまで延長された。チームの柱となる伊東大貴(写真右)、葛西紀明、栃本翔平の3人は今季結果を残しているが、4番手、5番手の選手がなかなか浮上してこなかったからである。
最終的にはベテランの岡部孝信が代表入りしたが、この代表の構成を見て、何か感じることはないだろうか?
どうみても、年齢的なバランスが悪いのである。
長野五輪の代表だった岡部、葛西が30代後半で、伊東、栃本、竹内択が20代前半。一見、ベテランと若手がうまくミックスされているようにも思うが、本来であれば選手としてピークを迎える20代中盤から後半の選手が欲しいところだ。しかし、現在の日本ジャンプ陣には世界で戦える選手が見当たらない。
なぜか?
20代の選手がいないのは、北海道の経済状況と関連が。
「20代後半は空白の世代」
と簡単に片づけてしまうことも可能だが、より深い事情がある。
いま、20代後半を迎えている世代は、ジャンプを続けたくとも続けることができなかったのである。
その要因は北海道経済の破綻にある。長らく日本のノルディック界は、北海道の企業が支えてきた。札幌五輪の70m級ジャンプで表彰台を独占した「日の丸飛行隊」の選手たちの所属企業を見れば明らかだ。
金メダリストの笠谷幸生はニッカ。銀メダリスト金野昭次が北海道拓殖銀行。そして、銅メダリストの青地清二は雪印乳業に所属していた。
いずれも北海道を代表する企業である。
そして1998年の長野五輪までは、この体制が緩やかに維持されていく……はずだった。