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15歳高木美帆が語った本音…“スーパー中学生”が挑んだ12年前の初五輪「普通に滑るのが難しい、がよく分かった」
posted2022/02/17 06:00
text by
宮部保範Yasunori Miyabe
photograph by
Naoya Sanuki
そんな高木が初めてオリンピックに出場したのが、2010年バンクーバー大会。スーパー中学生として話題を集めた15歳は、大舞台を経験して何を語っていたのか。
《初出:Number749号 2010年3月4日発売号「15歳の初挑戦 高木美帆「落ち込んだけど、力は出し切ったかな」/肩書などはすべて当時》
昨年の暮れに行なわれたバンクーバー五輪の代表選考会で、15歳の高木美帆は、日本スピードスケート史上最年少の五輪代表の座を射止めた。まるで彗星のように現れた少女は、スピードスケートだけにとどまらず、サッカーやヒップホップダンスにも才能を持つスーパー中学生として、日本中から注目を集めた。
しかし、高木は代表に選ばれるまで、五輪に出場するという夢を、胸に抱いたことすらなかったという。
「代表に決まるまでは、スケートは趣味でやっている感じでした。真剣に取り組んできた期間も短いし、まあ部活としてやってるっていう感じだったんですよ」
多くの代表選手が、子供の頃から五輪を意識して努力を続け、その栄誉を手にしているのとは対照的である。しかし、五輪には頓着して来なかった高木にも、代表に選ばれるとしっかりとした自覚が芽生えた。
「オリンピックに自分が選ばれたってことは、他の誰かが落ちてる訳じゃないですか。やっぱ頑張らないといけないっていうか、練習に真剣に取り組まなきゃ、普段の生活もしっかりしなきゃって、自然に思えたんです」
初めて体感する速さ「めっちゃ疲れちゃって」
1月20日から日本代表チームが組んだ、カナダ・カルガリーでの事前合宿にも精力的に臨んだ。高木は普段、地元で全国大会上位の中学生男子とトレーニングしている。しかし、当然ながら代表チームのスピードは、彼らを遥かに上回る物だった。
「カルガリーでは、結構ペースを上げて練習しました。シニアチームと遠征するのは初めてだったんですけど、滑るラップが速いし、量っていうより1本1本の質が高かった。めっちゃ疲れちゃって。もう、なんか体全体に疲れが溜まっちゃったって感じでした」
確かに、合宿地で行なわれたタイムトライアルでの記録は、平凡なものに留まった。
「2月5日にバンクーバーに入ってからは少し練習量を落として、自分のペースで出来たので良かった」というが、当地での記録会でもタイムは上がってこない。滑りにどこか精彩を欠いたまま、五輪の開幕を迎えた。