年間グランドスラムを達成して、大きな飛躍を遂げた昨季から一転。苦難続きとなった今季のりくりゅうは、道中で2人の原点を見つめ直していた。彼らが明かす「関係性の変化」とは。(原題:[試練の1年を終えて]三浦璃来&木原龍一「忘れちゃいけなかったこと」)
「今思えば……」。三浦璃来と木原龍一の2人は、そんな言葉で今シーズンを振り返り始めた。世界選手権から帰国して10日ほどたち、心も頭も整理された4月のこと。
「今思えば、無謀な計画でした」「今思えば、ネガティブになっていました」「今思えば、手がしびれていました」。次々と溢れ出る、驚くべきエピソード。しかし、それを語る表情に、一点の曇りもない。苦難の1年を経て、2人がたどり着いた境地とは――。
昨季は世界選手権を制し、悲願の頂点にたった2人。三浦は昨夏の会話を思い出す。
「『もっと強くなるために、新しいチャレンジが必要だね』と話し合いました。それで、ショートとフリーの計4つのリフトすべてで、新しい技を練習することにしました」
ところが10月の本格的なシーズンイン直前、木原の腰が悲鳴を上げた。
「夏くらいから違和感はあったのですが、今思えば『ペアスケーターは皆、常に腰痛はあるものなので大丈夫』と油断していました。MRIを撮ったら、はっきりと骨に線が写っていて……」
原因は、新しいリフトだった。リフト4つすべてを変えるというのは、シングルの選手でいえば、4回転ジャンプをいきなり4種類増やすようなもの。木原は言う。
「今思うとちょっと無謀なプランでした。世界チャンピオンになったからこそ『もっと成長しなきゃ』と思いすぎて、空回りしていました。リフトの練習量が多くなり、通常よりも腰に負荷がかかっていたのです」
診断は腰椎分離症。ドクターストップがかかった。
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photograph by Asami Enomoto