167cmの身体から放たれる無尽蔵のエネルギーが、仲間を鼓舞し、チームを新たな次元に導いている。情熱的な指揮官が厚い信頼を置く頼もしい30歳。不動のリーダーが兼ね備える、2つの強みとは――。
変わったものと、変わらないもの。
その2つがあるからこそ、富樫勇樹の言動は説得力を帯びる。
キャプテンの依頼を本気で断ったことのある富樫も、“今度は”断らなかった。
2020年夏。所属する千葉ジェッツで、当時の大野篤史HC(ヘッドコーチ)にキャプテン就任を求められたとき、富樫は一度、きっぱりと断った。それでも「既存のキャプテン像に合わせる必要はないから」という言葉とともに再度、打診されて、以下のような条件と引き換えに引き受けた。
「練習や試合前の(円陣での)声出しは恥ずかしいので、その仕事だけは(当時のムードメーカーだった)田口成浩にやってもらえるなら……」
2021年夏。新たに日本代表のHCに就任したトム・ホーバスから大役の打診があったときには、断らなかった。
新HCからは、情熱的に説明を受けた。
「ユウキが声を出してチームを引っ張るタイプではないことは、女子のHCを僕が務めていたときから、感じていたよ」
そう切り出された後、こう言われた。
「ユウキには、他の選手にはない経験がある。それに、キャプテンになれば、今までとは違う視点からチームを見ることになる。それは、ユウキの成長に必ずつながるし、チームの成長にもつながる。ユウキとチーム、一緒に前進していこうよ!」
富樫は当時をこう振り返る。
「自分の性格をわかってくれた上で、『チームと一緒になって成長していこう』という話でしたから。そこまで言われたら、引き受けないのは、ありえないことかなと」
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photograph by Kiichi Matsumoto