今年1月、神奈川大学を35年間指導してきた大後栄治監督が勇退。2021年よりコーチとしてチームに戻っていた中野監督が新監督となりました。大きな存在から大役を引き継ぐプレッシャー、就任1年目の収穫と課題、そして思い描く未来について、48分たっぷりとお話をうかがいました。
「プレッシャーしかなかったですね。自分の恩師でもありますし、35年なんてよくやられてこられたなと。いまもプレッシャーを感じています。大後栄治という存在がプレッシャーですね」
恩師・大後栄治前監督から神奈川大のチームを引き継いだことを、中野監督はこう表現します。実業団・SGホールディングス陸上部の監督をしていた中野監督に、大後先生から「母校に戻らないか」と打診があったのは2019年。「驚いた」ともいいつつ、「いつかは箱根駅伝に戻りたいと思っていた、学生スポーツに興味があった」という中野監督には、うれしいオファーだったとも振り返ります。
21年にチームに戻って驚いたのは、学生がなんでも決めて動いていること。「僕らの時代はやんちゃしかいなかったですから」といい、自分たちで行動を決めて、問題があった場合も学生間で解決していく姿に「すごいですね」といいます。
一方、学生たちには「全体に埋もれて個性を消すな」と常々伝えているという中野監督。「性格的には個性的なやつばっかりですよ」というので、一番個性的な選手は? とあえて聞いてみると、出てきたのは2年生の近藤大智選手の名前でした。
「地味な感じを受けますが、すごくピアノが上手で、ドイツ生まれなんです。高校のときはトライアスロンでも成績を残していましたね」
また、練習生から正式な部員になり、今年の箱根駅伝予選会と全日本大学駅伝でも走った志食隆希については「鉄人」と表現。士別ハーフを走ったあとの驚きエピソードも明かしてくれました。
そして3年生ではエースの宮本陽叶についても掘り下げて聞きました。
「正直、できている練習にたいしてタイムは全然物足りないですね。練習内容は他の選手と比べてもずば抜けているので、神奈川大学記録の(10000m)28分20秒も、早く更新しやがれと思っています」
今年は前年までチームを引っ張っていた力のある学年が抜け、新チーム始動当初は厳しい状況になるのではと予想していました。選手たち自らで決めた目標も「箱根駅伝出場」と控えめ。それが6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では下馬評をくつがえして出場を決め、箱根駅伝予選会も9位で通過。チームが良い方向に向かっている背景には、4年生の飯塚厚キャプテンの存在がありました。
「飯塚が中心になって力を貸してくれたから、下級生も伸びたと思います。これまでは練習量が足りないとわかっていても、行動に移せる子が少なかった。でもいまは思いを飯塚に伝えると、彼が選手たちへの言葉に落とし込んでくれています」とキャプテンへの信頼を口にします。
そして、来たるべき箱根駅伝での目標は…。
動画ではほかにも以下のようなことを聞いています。
・選手時代とコーチ時代で変わった大後先生の印象
・エース・宮本に箱根駅伝で期待すること
・全日本大学駅伝出場は「サプライズ」だけど…
・箱根駅伝予選会「完全に落ちたと思ってました」
・この1年でみるみる成長してきた選手
・低迷期を経て、どのように目標を設定していくか
・「学生スポーツ」としての箱根駅伝
・中野監督が指導者として参考にしている駅伝監督は…
選手からは「剛さん」と呼ばれているという中野監督。「誰も監督とは呼ばないです。指導者指導者したくなくて、『一緒に夢を追わせてもらっている』という感じです」。母校に戻り、新たな夢に向かう監督からは明るいオーラがあふれていました。ぜひご覧ください。(11月20日取材)
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