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「慶応高校野球部にも教えました」中竹竜ニと糸井重里が語り合う「ラグビーの本質、 組織内の当事者性」《トークセッション/2019年》

2023/10/29
2019年のラグビーワールドカップ開幕前に対談をした中竹さん(左)と糸井さん
にわかファン代表の糸井さんが、U20代表でヘッドコーチを務めたラグビー界きっての頭脳派と対談。信頼しあう2人の会話は、普遍的な組織論に発展した。(初出:NumberNumberPLUS ラグビー日本代表超入門2019 中竹竜ニ 糸井重里 [深掘りトークセッション] 「ラグビーについて話しているといつも“組織”のことを考えてしまう」)

―南アフリカ戦の座談会(P8~)で糸井さんがおっしゃった「選手と僕らでは解像度が違う」という言葉が面白かったです。

中竹 解像度?

糸井 普段考えていることが、ラグビーにも当てはまるなと思ったんです。ある工業デザインの先生がこんなことをツイートしていました。素人に「キリンを描きなさい」と言うと、基本的には、首が長い、角がある、脚も長い、といった「言葉」を絵にするだけなんです。でも、絵描きやデザイナー、本来のデッサンを勉強した人たちは、言葉から解き放たれた「見えるもの」を紙の上に写すことができる。それが、ものの見方の解像度が違うということで。

中竹 すごく興味深い話ですね。確かにラグビーでも簡単な言葉では説明できないことがたくさんありますからね。

©鈴木七絵
©鈴木七絵

糸井 僕らが雑に見ているプレーが、選手の解説を聞くとまったく違う見え方をしてきたんです。その“深さ”には憧れました。

―解像度の違いが生まれるのは、ラグビーが他のスポーツと比べて「仕込み」の密度が濃いことも関係するかもしれません。

中竹 ラグビーは準備のプロセスが非常に長く、相手との情報戦もあるので、その内容が簡単に外には出てきませんからね。

糸井 聞かれなきゃ答えないというものの中にこそ“宝”があるので、僕みたいなラグビーの素人が質問をして「よくそんなこと聞くね」と言われたほうがいいですね。

中竹 代表レベルになると理由がないプレー、準備のプロセスが反映されていないプレーはあんまりないんです。だから質問をされれば、選手や監督は答えられる。実は前回W杯前の準備、つまり練習で面白い話があります。ヘッドコーチのエディー・ジョーンズが選手にやらせていた練習は、科学的に検証すると間違いだらけなんです。でも、科学的には間違っていても、チームを正しい方向に導くことがある。理屈では測れないものが作用した事例ですね。

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photograph by 鈴木七絵
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