#1007
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《ラグビー 日本代表》2019年W杯で「ベスト8」を可能にした“探求” とは?【NZ人メンタルコーチは「不思議なスピリチュアルなおじさん」?】
2024/01/17
自国開催のW杯で史上初となる8強進出。多国籍にして多彩な個性がきらめく日本代表は、いかに結束し、列強を次々と撃破し得たのか。NZ生まれのメンタルコーチの“秘術”から「ワンチーム」へと至る桜戦士の心の旅を探った。(初出:Number1007号ラグビー 日本代表 [メンタルコーチが明かす] ベスト8躍進 を可能にした“アイデンティティの探求”。)
W杯に向けた合宿の最中、田中史朗には忘れられない練習がある。
「筋トレでめっちゃ追い込んでいる最中に、デーブが変な問題出すんですよ」
ホワイトボードにはこんな文章が、英語と日本語で書かれていた。
「テレサの娘が私の娘の母だったら、私はテレサの何にあたる?」
心穏やかな時ならすぐに答えられたかもしれない。しかし、選手たちは脈拍が200を超えるような状況でこのクイズに取り組まざるを得なかった。田中は振り返る。
「みんなでコミュニケーションを取りながら、答えをああだこうだと話し合ってましたね。ケンキ(福岡堅樹)がめっちゃ賢くて、すぐ答えてしまうんで、そのうち『お前は答えんでええ』と外されてました(笑)」
この問題を考えたのは、昨年のW杯で日本代表のメンタルコーチをつとめたデイビッド・ガルブレイスだった。現在はニュージーランドに帰国している彼に、出題の意図はなんだったのかを聞いてみた。
「現代のラグビーでは選手は徹底的に鍛え上げられ、ちょっとしたことが勝負の分かれ目になります。瞬時の判断、一瞬のうちにリスクを取れるかが勝敗の鍵になるんです。無意識にリスクを取れるよう、こうしたトレーニングを思いついたのですが、どうせやるなら楽しい方がいいでしょう?」
ユニークなアプローチだ。てっきりアイデアマンだと思ってしまいそうだが、’19年3月の沖縄合宿で初めてガルブレイスが合流した時のセッションは、毛色が違っていたと通訳の佐藤秀典は思い出す。
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photograph by Atsushi Kondo