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アイルランド戦金星の6日前「流は静かな興奮を覚えた…」ジェイミージャパン“地図のない冒険”を辿って【連載・桜の真実2019 序章】
「アイルランド戦は……ポゼッションを重視すべきだと思うんだが」
アタックコーチのトニー・ブラウンからジェイミー・ジョセフをはじめとしたスタッフに提案があったのは、9月6日に埼玉・熊谷での南アフリカ戦が終わってからだった。
2016年にヘッドコーチに就任して以来、指揮官ジェイミーが唱えてきたのはキックによって生まれる「アンストラクチャー」、すなわち混沌局面を制することで得点機を演出するというプランだった。
しかし、その戦略の浸透には時間が必要だった。’16年秋のフィジー戦では、キックからのカウンターが得意なフィジーに対し、わざわざキックで餌を差し出し完敗。’18年6月のイタリアとのテストマッチまでアンストラクチャーが完全に機能したとは言い難く、選手たちの間でも、「本当にこれでW杯を戦えるのか?」と疑念が囁かれていた。

ようやくジャパンが反攻に転じたのは、’18年11月のテストマッチからだった。ラグビーの聖地トゥイッケナムでエディー・ジョーンズ率いるイングランドと戦い、前半をリードして折り返すなど、一定の成果を上げた。そしていよいよW杯イヤーを迎え、7~8月のパシフィック・ネーションズカップ、そして9月の南アフリカ戦でもキックを主眼にした戦いを続けていた。それは本番への予行演習だと見られていた。
しかし、プール第2戦のアイルランド戦を前にして軍師トニーはアンストラクチャーではなく、徹底的にボールをつなぎ、ポゼッションを重視する姿勢を鮮明に打ち出した。
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