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「もはやメダルは夢物語じゃない」石川祐希が語った東京オリンピック<運命のイラン戦>と仲間への感謝《29年ぶりの五輪ベスト8》
勝てばベスト8。負ければ終わり。
これ以上なくわかりやすい状況で迎えた男子バレーボール予選ラウンド最終戦、日本対イラン。互いが2セットずつを取り合い迎えた最終セット。サーブエリアへ向かう石川祐希は冷静だった。
「絶対にエースを取ってやるとか、ミスしたらどうしようとか、そういうことは全く考えませんでした。あえて考えなかったわけではなく、全く無意識。普通に、やるべきことが1つ1つ、確認できていましたね」
トスが悪いと強くヒットすることができないから、まずはトスをしっかり前に出す。力み過ぎず、リラックスしながら、最後の最後、ボールを叩く瞬間にグッと力を入れ、腹筋を締める感覚で、打つ―。
放たれたサーブは相手レシーバーも返すことができず、ボールがそのままスタンドへ飛び込む。石川は両手の拳を握り締め、吼えた。
「めちゃくちゃ吼えて、喝を入れると頭がスッキリするんです。いい時ばかりでなく、悪いプレーをした後に得点を取った時も同じ。熱くなったままではなく、一度気持ちを切り替える。次のプレーにもいい意味で引きずらず、集中することができるようになりました」
有言実行とばかりに、またスイッチを切り替え、冷静に放った2本目のサーブもイランのレシーブを弾き飛ばし、2─0。最高のスタートを切った最終セットを15─13で競り勝ち、フルセットで勝利した日本がベスト8進出を決めた。
興奮気味に29年ぶりの準々決勝、とテレビ中継の実況は繰り返す。だが、そこでも石川は冷静だった。まだ熱の残るコートの隅に選手を集め、輪の中心で声をかけた。
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