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「もはやメダルは夢物語じゃない」石川祐希が語った東京オリンピック<運命のイラン戦>と仲間への感謝《29年ぶりの五輪ベスト8》

2023/10/25
準々決勝ブラジル戦は両チーム最多の17得点。大会を通じて主軸、主将として牽引した
(初出:NumberPLUS「完全保存版 東京オリンピック2020 輝きの記憶。」[29年ぶりのベスト8]石川祐希「もはやメダルは夢物語じゃない」)

 勝てばベスト8。負ければ終わり。

 これ以上なくわかりやすい状況で迎えた男子バレーボール予選ラウンド最終戦、日本対イラン。互いが2セットずつを取り合い迎えた最終セット。サーブエリアへ向かう石川祐希は冷静だった。

「絶対にエースを取ってやるとか、ミスしたらどうしようとか、そういうことは全く考えませんでした。あえて考えなかったわけではなく、全く無意識。普通に、やるべきことが1つ1つ、確認できていましたね」

 トスが悪いと強くヒットすることができないから、まずはトスをしっかり前に出す。力み過ぎず、リラックスしながら、最後の最後、ボールを叩く瞬間にグッと力を入れ、腹筋を締める感覚で、打つ―。

 放たれたサーブは相手レシーバーも返すことができず、ボールがそのままスタンドへ飛び込む。石川は両手の拳を握り締め、吼えた。

「めちゃくちゃ吼えて、喝を入れると頭がスッキリするんです。いい時ばかりでなく、悪いプレーをした後に得点を取った時も同じ。熱くなったままではなく、一度気持ちを切り替える。次のプレーにもいい意味で引きずらず、集中することができるようになりました」

 有言実行とばかりに、またスイッチを切り替え、冷静に放った2本目のサーブもイランのレシーブを弾き飛ばし、2─0。最高のスタートを切った最終セットを15─13で競り勝ち、フルセットで勝利した日本がベスト8進出を決めた。

 興奮気味に29年ぶりの準々決勝、とテレビ中継の実況は繰り返す。だが、そこでも石川は冷静だった。まだ熱の残るコートの隅に選手を集め、輪の中心で声をかけた。

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photograph by Itaru Chiba

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