世界の舞台でまるで歯が立たない暗黒時代を肌で知り、最前線に立って日本を高みへと導いた先駆者でもある。これがラグビーです――W杯を4大会連続で戦い抜いた35歳の言葉には夢破れた無念と揺るがぬ矜持が溢れていた。
背番号6は特別だった。
しなやかで、強靱。相手に身体をぶつければすぐに立ち上がり、次のボールキャリーへ、次のタックルへと走る。
重量感とスピードの両立。他を圧するほどの存在感がありながら、その足取りはどこか軽やかだ。どこにでも現れて強く激しく身体を張る。張り続ける。
リーチマイケルは、それをワールドカップ(W杯)の4試合、交替したサモア戦の最後の5分間を除く315分間にわたって遂行し続けた。
10月8日、フランス西部の港町ナント。8強進出がかかったアルゼンチン戦は、互いにトライを取り合う熱戦に。前半は先行されたものの14-15の1点差で折り返し、後半も2度にわたって2点差に迫った。しかし日本は一度もリードを奪えなかった。
27-39の敗戦。試合後、フラッシュインタビュー。リーチは口を開いた。
「全力を尽くしました。ここまでいい準備をして臨んだけれど、今日は相手の方が強かった。これがラグビーです」
常に先頭に立って、身体を張り続けた男は、潔く相手の勝利を認めた。
トライ、スクラム、タックル…すべての試合に全力だった。
すべてを出し切って負けたなら素直に相手を祝福できる。それほど、すべての試合で、リーチは全力を出し切っていた。
チリ戦では前半11分、タッチライン際を抜けようとする相手選手に後方から追いついて猛タックル。重圧のかかる初戦で、先頭に立ってピンチを防いだ。後半13分にはディラン・ライリーのシンビンで1人少ない中、右隅で相手DFを引きつけながらグラウンドの逆サイドに高速移動してゲームの流れを決定づけるトライ。2人分の働きでチームを42-12の勝利に導いた。
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photograph by Kiichi Matsumoto