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「全員の“イエス”が必要だった」トム・ホーバスHCが語るリーダーシップの極意<バスケ日本代表の目標は「アジア1位」>

東京五輪で女子代表を史上初の銀メダル獲得に導いた知将が、'21年9月、男子代表の指揮を任され、新たな戦いをスタートさせた。世界的に見ても異例の決断は、自らの人生を懸けた大きな挑戦。運命を握る大一番を前に、指揮官がその指導哲学、情熱を語った。

 トム・ホーバスは怒っていた。自分では、昔に比べてだいぶ丸くなったと思っているのだが、それでも、時々、情熱がほとばしる。

 2021年に女子日本代表を東京オリンピック銀メダルの快進撃に導いたホーバスは、大会後に男子日本代表ヘッドコーチに就任した。その年の11月に行われた最初の公式戦、FIBAバスケットボールワールドカップアジア地区予選Window1の中国戦2試合目のハーフタイムでのことだった。

 この時の怒りの相手は比江島慎。30代のベテランで、国際大会での実績もある選手だ。しかし、ベテランだろうが実績があろうが関係なかった。消極的でやる気がなさそうなプレーを見て、怒りが抑えられなかった。試合開始から2分もたたないうちに彼をベンチに下げると、ハーフタイムまで試合に戻すことはなかった。

「ここにいたくないなら帰ってもいいですよ。後半、プレーしたいという気持ちがありますか?」

 ハーフタイムのロッカールームで、ホーバスは比江島にそう問いかけた。すると、ホーバスにとって意外だったことに、「プレーしたいです。やらせてください」と、熱がこもった返事が戻ってきた。どちらかというと感情を表に出さない比江島が、熱くなって言い返すのも珍しいことだった。

©Kiichi Matsumoto
©Kiichi Matsumoto

 ホーバスは、そのときのやり取りについて、こう振り返る。

「比江島をコーチし始めたとき、彼は物静かでほとんど話しませんでした。そんな彼を見て、どうでもいいと思っているように感じたのです。それで、ハーフタイムで彼に怒ってしまい、『後半プレーしたいという気持ちはあるのか?』と聞きました。すると彼は『プレーしたいです』と答えたのです。そうなのか、と思いました」

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photograph by Kiichi Matsumoto

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