W杯前の強化試合は厳しい結果に終わった。しかし指揮官、そして主将たちの言葉と姿勢は常にポジティブで冷静だった。その理由とは――。
「国内の5試合、みなさんに良い結果を届けることができず、悔しい思いであります」
8月5日、秩父宮ラグビー場。フィジー戦に12-35で敗れた試合後、メインスタンドに向かって立った選手団の列の真ん中で、姫野和樹主将はそうスタンドのファンに向かって語りかけた。
7月8日のオールブラックスXV戦から始まったW杯イヤーの国内5連戦。日本代表にとっては前回の8強を上回る成績を、それどころか「優勝」という野望まで口にして臨んだ勝負のシーズン。しかし日本代表は1勝4敗という、予想外に渋い結果で強化シリーズを終えてしまった。
ただ、と断って姫野は続けた。
「僕たちはW杯という高い山へ向かって、まだまだ旅路の途中です。残り少ない時間、しっかりチームとして絆を持って、修正して、W杯に臨みたいと思います。これからもラグビー日本代表に期待して下さい。そして背中を押して下さい。フランスに行ってからも、みなさんの応援は選手の力になります」
2万2000人超の観衆を飲み込んだスタンドからは温かい拍手が送られた。姫野の挨拶に続いて、選手たちは秩父宮のグラウンドを一周した。その列には、国内5連戦で一度もジャージーを着る機会のなかった選手や、この日初出場を果たしながら、わずか7分の出場でレッドカード処分を受けてしまったピーター・ラブスカフニもいたが、誰もが胸を張って歩いていた。
敗れても、誰もネガティブにはなっていない――それがこの日の印象だった。
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photograph by Yuka Shiga