決して過信などではない。確かな実力に裏打ちされた自信が、日本の守護神をさらなる高みへ押し上げつつある。
「いまはどんな相手とやっても勝てるって思えるんですよ。なぜそんな風に思えるのか、自分でも理由は分かりませんが」
山本智大、28歳。日本代表を束ねるフィリップ・ブラン監督から全幅の信頼を寄せられてきた不動のリベロが現在の心境をこう明かす。
初の銅メダル獲得という快挙を成し遂げたネーションズリーグはその好例だろう。昨年の世界選手権を制した強豪イタリアとの3位決定戦に臨む際、山本の自信は少しも揺るがなかったという。自分たちは勝てるはずだ。いや、必ず勝てると。
「実のところ、ポーランドとの準決勝でも僕自身はイケると思っていましたからね。結局、負けてしまいましたが」
もはや、どんな相手も恐れない。それはファイナルラウンド初戦で強豪フランスと互角に渡り合った昨年の世界選手権当時にはなかった感覚だという。つまりは、この1年で心境が大きく変わったわけだ。いったい、何があったのか。その背景を探っていくと、山本が別世界の住人と化した秘密に突き当たる。
「ディグ」にトライして「あれ?全部見えるじゃん」
「昨年の世界選手権が終わったあとくらいからですね。ちょっとトライしてみるか、と思ったのは」
現在では「ディグ」と呼ばれるスパイクレシーブの新たな試みのことだ。ポイントは2つ。1つは動きを止めてから、相手の攻撃に反応することにあった。果たして、そこに狙いがあったのか。
「もちろん、動きながらでもボールは拾えます。ただ、相手に速いスパイクを打たれた時により速く感じてしまって、ミスにつながりやすい。そこで1回止まってみようと思ったんです。それで拾えなかったら、また考えればいいと。そう割り切ってトライしたら、意外とフィットしたんですよ。あれ? 全部見えるじゃんと」
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