「強い相手に勝つ」ために、鍛え上げられた日本のスクラム。そこには長谷川慎コーチならではの思想とディテールがあった。2003年のW杯を共に戦った盟友・山村亮氏がその秘密に迫る。
(聞き手:山村亮)
我々の目標はフランスW杯で勝つこと。そのためには試合会場の芝にアジャストできないと始まりません。
どれだけ良いスクラムを作り上げてもスパイクが滑ってしまうと台無しです。フランスW杯のプールDで戦う4試合の会場を調べたら、すべて同じハイブリッドの芝生であることがわかりました。なので、ちょっと無理を言って、宮崎の合宿地も同じハイブリッドの芝生にしてもらいました。
当然、選手たちはスパイクを履いてプレーします。スパイクの裏にはポイントがあるのですが、つま先側にある6つのポイントのうち、前の4つが芝生にかかることを意識するよう、選手には厳しく言い続けています。
これはなぜかというと、前の4つのポイントがかかることで、スクラムにおける動きの無駄をなくせて、より押す力を引き出せるから。だからいまは試合前日練習のときに芝生との相性を確認して、選手たちのスパイクを全部チェックしています。言い換えれば、日本のスクラムはスパイクのポイントがちゃんと芝生に“噛む”前提で作っているんです。
相手が100%の力を出せないようにするのが「日本のスクラム」。
では、日本のスクラムの特徴とは何か。日本は100%の力で組むけど、相手には70%の力しか出させないようにすることです。その鍵を握るのがフロントロー、背番号1、2、3番のプロップとフッカーの3人です。日本のスクラムにおいて、彼らはあえて相手を押しません。フロントローの役目は「相手を崩すこと」です。それによって、相手が100%の力を出せないようにします。
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photograph by Atsushi Kondo