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松坂大輔が語るドラフト裏話「苦笑いを浮かべたクジの瞬間」~連載<怪物秘録>第23回~

2023/04/26
1998年11月20日、運命のドラフト当日がやってきた。平成の怪物を1位指名したのは、ファイターズ、ライオンズ、ベイスターズの3球団。当たりクジを引いたのは東尾修だった。

 1998年、秋のドラフト会議。ベイスターズ、ファイターズ、ライオンズの3球団競合の末、横浜高校の松坂大輔の交渉権を獲得したのは、西武ライオンズだった。「在京セ」を希望球団として挙げていた松坂は「外れたなと……甘くはなかったですね」と言って、苦笑いを浮かべた。

◆◆◆

 甘くなかった……確かにそう言いましたね。覚えています。でも、あの言葉は本音じゃなかった。ライオンズに指名された時点で「好きな球団ですから、行きます」と言ってもいいくらいの気持ちでした。

 ライオンズは僕の好きな球団のひとつでした。好きな球団を訊かれたら「西武と巨人」とずっと言ってきましたし、ライオンズには大好きだった清原(和博)さんがいましたからね。その清原さんが(1997年から)ジャイアンツへ移籍して桑田(真澄)さんと一緒にプレーしているとなれば、僕の気持ちとしてはいちばん行きたかったのはジャイアンツでした。でもライオンズも1997、'98年と2年続けてパ・リーグのチャンピオンでしたから、僕にはいいイメージしかありませんでした。

 それでも東尾(修)さんが当たりクジを引いたときに苦笑いを浮かべたのは、やっぱり思い通りにはいかないんだなと感じたからだと思います。ジャイアンツは逆指名制度を使って上原(浩治)さんを1位で指名することが決まっていましたから僕の名前が挙がることは絶対にあり得なかったんですけど、ドラフトですから何があるかわからないという、漠然とした期待があったのかもしれません。

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photograph by Kiichi Matsumoto

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