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[18番から18番へ]桑田真澄「お互いに人生の完投勝利を目指して」

2021/11/06
松坂大輔が憧れを抱いた存在。それが桑田真澄だった。甲子園優勝投手、ワインドアップ、23年間のプロ生活――。数々の共通項を持つ「背番号18」が贈る最後のメッセージ。

 大輔は悔いのない現役生活を送ったのかな。ここ数年はケガに悩まされて投げられず、いつ引退してもおかしくないシーズンを送っていたと思います。だからこそやり切った、もう卒業だという気持ちで野球人生を終えてほしいと願っていました。大輔に話したのは「悔いなく終えるのは難しいと言われるけど、自分が納得して次のステージに行こうという気持ちになれればそれでいいんじゃないか」ということ。大事なのは自分の思うままに決断することなんです。大輔は今、41歳か。200勝まであとどのくらいだったの……えっ、170勝? それは驚いた。もっともっとたくさん勝ってるイメージがありますよね。

 初めて大輔と話をしたのは22年前、彼がプロ1年目の開幕を迎える直前のことでした。そのときは「がむしゃらにやればいい」と話した記憶があります。1年目というのはプロ野球の世界がわからない。だから、がむしゃらにやればプロ野球はこういう流れで進むんだ、こういう選手がいるんだ、こうやれば勝てるんだということがわかるようになります。勝っても負けてもいいから、がむしゃらにやるだけでいい。そのことを伝えたかったんです。そうすることで自分の立ち位置を感じ取る……エースになるためにはこの経験が欠かせません。

 大輔が横浜高校のとき、夏の甲子園でPL学園と延長17回を戦ったことがありました。僕はPLに勝ってほしいと思ってテレビを観ていましたが、なぜか大輔に対して「これは勝たないとダメだ」「この試合に負けるようなら大輔の応援はしないよ」という気持ちになったのを覚えています。あの試合に勝ったとき、この先はずっと大輔の応援をしようと勝手に(笑)決めました。プロで大成して活躍してほしいという想いが芽生えたのはあの試合でした。

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photograph by Naoya Sanuki

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