10月8日、高梨沙羅は28歳になった。
初めて海外転戦を始めたのが2009年だから、もう15年以上第一線に立ち続けてきたことになる。
「なんか自分はずっと若手だと思ってたんですけど、もう若手じゃないんだなって感じることが最近すごく多いんです。筋肉痛は治らないし、以前のように長いフライトで爆睡できなくて時間をつぶすのが大変。時差ボケもなかなか治らなくって」
W杯で覇を争ったサラ・ヘンドリクソン、'11年世界選手権覇者のダニエラ・イラシュコ=シュトルツ、'18年平昌五輪金メダリストのマーレン・ルンビ。かつてのライバルたちは、すでにシャンツェから姿を消した。
ふと女子スキージャンプの世界を見渡せば、当時から飛び続けて今なお現役なのは、日本代表の伊藤有希ら数えるほどしかいなくなってしまった。
「さみしいですね。一緒に戦ってきた選手がいなくなるのは。今まで通りにはいかなくなりますから。その存在がいなくなることで会場の景色が変わって見えるんです」
国際スキー連盟がルールの一部を変更
ただ、高梨はこうも言った。
「まあでも、慣れていくんですけどね」
落ち着き払った一言に、ベテランの域に差し掛かった彼女が重ねてきた経験と、競技者としての冷徹さがにじんでいた。環境に順応し、変化に適応し続けなければ、この世界では前に進めないのだ。
そして、今季もまた高梨は新しい対応を迫られている。
国際スキー連盟がルールの一部を変更し、着地時のテレマーク(足を前後に開いて膝を深く曲げ、両手を横に開く姿勢)をより厳格に見ることになった。これまではテレマークが入っていなければ飛型点から最大2点減点。それが3点まで増えた。ラージヒルでの飛距離点が1mで1.8点だから結果にも大きく影響する改定だ。
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