ワールドカップに4大会連続で出場した東大阪のヒーローが花園に戻ってきた。「トモさんが来たで!」。店内に響く声に笑顔で応え、関西弁で会話を交わす。なぜ彼はこの地で愛されるのか――。(初出:Number993・994号<さらば鉄人ロック>トンプソンルーク「ありがとう、東大阪」)
ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会が終わり、日本代表のロック、トンプソンルークは所属チーム、近鉄ライナーズへ帰還した。
近鉄は2部のトップチャレンジリーグに所属する。11月24日、地元、東大阪・花園ラグビー場で豊田自動織機との試合が組まれていたが、ホームでの試合はこれが唯一のもの。すなわち、今シーズンで選手引退を表明しているトンプソンの、地元でのラストゲームとなる。
ラグビーファンはそのことを知っている。観衆1万5000人余。2部リーグの試合で、バックスタンドまで埋まる盛況となったのはそのせいであったろう。「トモさん ありがとう」。そんな横断幕も見える。
スクラム、ラインアウト、モール、ラック……トンプソンはFWの核として着実な、淡々とも映るプレーを続けていく。近鉄が先制してリードするが、豊田も反撃、好ゲームとなった。
33-22で近鉄の勝利に終わったゲーム、場内がこの日一番の拍手に包まれたのは後半半ば過ぎ、トンプソンが選手交代でフィールドを退く際だった。勇者の見納め時とばかり、拍手は長く続いた。
W杯の出場試合は歴代最多の14。
試合終了後、トンプソンは場内を一周、手を振り、あるいは差し出される手を握りつつ、「声援、ありがとう」「ありがとうございました」と応えた。途中から、3人の子供たちとネリッサ夫人も加わった。いい風景だった。
近鉄在籍14年、日本代表として4度W杯出場、W杯での通算出場試合数14は日本代表歴代最多である。いつの間にか実績を重ね、人気選手ともなった。
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photograph by Naohiro Kurashina