誰も知らない森保一BACK NUMBER

「日本代表選手に訴えた“君が代をしっかり歌おう”」森保一監督が明かす、なぜ国歌で泣くのか?「最近カメラが増えて…そろそろ涙が出なくなるかも」 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

PROFILE

photograph byAsami Enomoto

posted2025/12/31 11:04

「日本代表選手に訴えた“君が代をしっかり歌おう”」森保一監督が明かす、なぜ国歌で泣くのか?「最近カメラが増えて…そろそろ涙が出なくなるかも」<Number Web> photograph by Asami Enomoto

NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)

「君が代で泣くのは、代表監督として何か背負っているというより、日本人である喜びと誇りが湧き出てくるからです。

 国歌ってすごいと思うんですよ。なぜかあの瞬間、自分に歴史が降ってくるみたいな感じがして。日本という国も、日本サッカーも、過去があって今があるという感覚になります。

 日本史を深く語れるほど知識があるわけではありませんが、これまでの戦争で犠牲になった人たちを取り上げる歴史の番組をよく見るんです。国歌を聴くたびに、豊かな社会の中で育ち、自分の好きな仕事に取り組めることへの感謝の気持ちが湧き上がってきます」

ADVERTISEMENT

 平和は当たり前のものではない――。国をまたいで活動する代表監督だからこそ実感する感覚なのだろう。

 2022年W杯2次予選の日本対ミャンマーでは、軍に抗議するジェスチャーをしたミャンマー代表のGKが帰国便に搭乗せず、難民認定を申請する出来事があった。試合の約4カ月前、ミャンマーでは軍事クーデターが起こっていた。

 2026年W杯2次予選で、日本はシリアと北朝鮮と同組になる。シリアは内戦中だったため、シリア対日本は中立地のサウジアラビアで開催された。北朝鮮対日本は平壌で開催予定だったが、北朝鮮の意向で中止になり、没収試合になった。

 世界には安全な環境でサッカーの試合を開催できない国や地域がある。それを身をもって理解しているからこそ、先人たちが築いてくれた平和に感謝の念を抱かずにはいられないのだろう。

「自己肯定感、自国肯定感の向上に貢献したい」

 感謝の気持ちが大きくなるほど、恩返しをしたいという使命感が強くなる。森保にはサッカーを通して、日本に貢献したいという想いがある。

「日本人は謙遜する文化があるのでどれだけデータの信頼性があるかわかりません。でも、日本は世界の中でも自己肯定感も低いという調査があるじゃないですか。おこがましいかもしれませんが、日本サッカーはその向上に貢献できるんじゃないかと考えています。

 日本はまだW杯で優勝したことがありませんが、もしそこで勝てたら国の立ち位置を変えられ、国益にもつながる。サッカーは世界の中でそれくらい影響力があるスポーツだと思います。

 サッカーを通して、試合前に国歌を歌い、日本人の心を感じて、みんなでひとつのことに挑む。そういうことを多くのみなさんと共有できたら嬉しいです」

「みんな、国歌をしっかり歌おう」

 森保は代表選手たちに「国歌をしっかり歌おう」と訴えたことがある。今年7月、東アジアE-1選手権に密着した『Team Cam』。代表初招集の選手が多いなか、森保が試合前のミーティングでこう語りかける場面があった。

【次ページ】 「みんな、国歌をしっかり歌おう」

BACK 1 2 3 NEXT
#森保一
#久保建英
#堂安律
#伊東純也
#中村敬斗
#上田綺世
#鈴木彩艶
#ガブリエウ・マルチネッリ
#望月ヘンリー海輝
#瀬古歩夢
#長友佑都
#ロドリゴ
#サッカーブラジル代表
#カルロ・アンチェロッティ
#名波浩
#今西和男
#齊藤俊秀
#長谷部誠
#前田遼一
#北中米W杯

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ