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「森保さんすごいな…」堂安律も驚いた「伊東純也シャドー起用」名采配の真相…森保一監督がいま明かす“ブラジル戦、歴史的勝利のウラ側”
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木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAsami Enomoto
posted2025/12/30 11:11
NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(57歳)
そして後半25分、鈴木彩艶がロングキックをブラジルのゴール前に蹴り込み、上田綺世が相手DFと競り合うと、こぼれ球が右シャドーの伊東に渡った。伊東が顔を上げて中を見て高速クロスを上げると、上田が競ってCKを獲得。伊東がCKを蹴り、上田の逆転ヘディング弾が決まった。
もし過去の成功をなぞって「堂安=内、伊東=外」にしていたら、これほどスムーズに得点が生まれなかったかもしれない。
選手自身にとっても驚きの采配だった。試合後、堂安本人がこう語った。
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「僕をウイングバックにしたまま、純也くんをシャドーに置いたのは意図を感じました。純也くんを走らせたいのかなと。僕は外で起点になれていたので。(采配が)すごいなと思いました」
森保監督が語る「私の鉄則として…」
なぜ森保は過去と異なる配置をしたのだろう?
11月下旬、JFA夢フィールドでインタビューすると、森保は勝負師らしい不敵な笑みを浮かべた。
「安定を求めるのが定石ですから」
森保はそう切り出すと、采配の哲学を語り始めた。
「戦い方がハマっているときは、守備の選手は基本的には動かさない方がいいと考えています。ちょっとした隙が生まれたり、連係がうまくいかなかったりしたら、そこを突かれて一瞬でやられてしまう可能性がある。レベルが高くなればなるほど、そういうことが起こりやすくなります。
私の鉄則として、うまくいっているときは守備を変えない。わざわざ動かして、水漏れが起こるようなことはしない。親善試合であらかじめ変えると決めていたり、怪我人が出たり、局面で完全に負けたりしているといったことを除き、守備は変えないのが鉄則です」
「じつはハーフタイム時点では、“逆”を考えていた」
この日、ブラジルの左ウイングはガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)、左サイドバックはカルロス・アウグスト(インテル)が先発しており、日本の右ウイングバックには難しい守備対応が求められていた。アウグストを監視しながら、右センターバックを助けるためにマルティネッリにも対応しなければならない。
前半にマルティネッリに裏に抜けられて2点目を決められた場面以外、堂安は渡辺剛をサポートしてうまく守っていた。堂安を内側に移動させたら、水漏れが起こりかねない。


