広岡達朗が激怒「ジャイアンツはここまで落ちぶれてしまったのか？」“巨人との大乱闘”でヤクルトナインが覚醒した日「あんなチームに負けてたまるか」 

「森さんは、いつも“ジャイアンツなんかたいしたことがない”と言っていたけど、最初の頃は半信半疑で聞いているわけです。でも、何度も、何度もそれを繰り返す。“Ⅴ9の頃と今のジャイアンツは全然違うんだ”と繰り返すわけです。ヤクルトはメンバーを固定して戦っているけれど、ジャイアンツはメンバーを固定できていない。そうした点を、選手たちに常に指摘していましたから」

　それはまさに、広岡が森に期待した重要な役割だった。この言葉を受けて、八重樫も次第にその気になってくる。

「王さんも現役晩年を迎えていたし、チーム自体の打撃力が落ちてきているのに、ジャイアンツは極端に送りバントが少なかった。長嶋さんの性格的なこともあるのかもしれないけど、僕たちは三原脩監督の頃から、コツコツ一点を取る野球を学んできました。巨人の欠点も見えてきたし、自分たちの野球にも自信が芽生えてきたし、ジャイアンツコンプレックスは少しずつなくなっていったと思いますね」

「ジャイアンツコンプレックス」は次第に減じていったと証言する八重樫幸雄　©Hideki Sugiyama

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　八重樫の言葉を裏づける象徴的な一戦がある。伊勢が顔面にデッドボールを受け、自打球が顔面に直撃した大杉が病院に運ばれた「あの一戦」である。

「死球でシピンが激怒」巨人戦で起きた“事件”

　1978年7月10日、この日、神宮球場ではスワローズ対ジャイアンツ16回戦が行われた。神奈川・鶴見の病室で戦況を見守っていた八重樫も、「あの試合は巨人に対する意地を見せた一戦」と振り返る激闘だ。

　前夜はエース・松岡弘が先発し、倉田誠、安田猛、井原慎一朗、梶間健一、そして三浦政基を投入して、六対六の痛み分けを演じていた。監督就任早々に「投手ローテーションを確立する」と宣言していた広岡ではあったが、「打倒巨人」の執念が垣間見える必死の継投だった。

　この時点でスワローズは64試合を戦い、35勝21敗8分で首位をキープしていたが、2位・ホエールズとは2ゲーム差、3位・ジャイアンツも2・5ゲーム差まで迫りつつあった。プロ6年目の鈴木康二朗が先発マウンドに上がる。そして、初回に事件が起こった。いきなり1点を失い、なんとかツーアウトまで持ち込んだが、打席に入った五番・シピンへの初球。鈴木が投じたシュートが脇腹を直撃する。

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