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38歳でも進化を続ける篠山竜青が語る「10年前よりバスケが上手くなっている」理由とは。[MVVりらいぶ賞 受賞者インタビュー]
posted2026/07/24 11:00
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto
川崎ブレイブサンダースを長く支えた、ニック・ファジーカスが2023-24シーズンで引退し、以降、チームは再建という現実と向き合っている。一昨季はレギュラーシーズン中地区8位、昨季は東地区12位と、直近の2シーズンはかつての常勝の姿とは異なる、激動の日々を過ごした。
「前向きな言葉で言い表すのが難しいシーズンで、正直、うまくいかないことの方が多かった。ファミリーの皆さんも、僕らも、すごく苦しんだ1年でしたね」
だが、チームの精神的支柱である篠山竜青は先が見えにくい状況でも、自らの役割を再定義し、揺らいだ基盤を一つずつ積み直す地道な挑戦に向かった。
「チャンピオンシップや優勝を狙える段階にはいませんでした。だからまずはチームが崩れないための確固たる土台をつくる必要があった。その上で、最低限、成長するために今やるべきことを明確にすることが大事だと考えていました」
山内ジャヘル琉人、米須玲音といった若手には、たとえば一つのファウルの使い方やプレーの強度の維持など、具体的かつ基本的な規律を説き続けた。
そこには篠山自身の深い後悔が投影されている。ルーキー時代の経験を貴重な成長期と振り返る一方で、2年目以降、ファジーカスや辻直人らが加わり、一気に優勝候補へ躍進したことで、自らの成長曲線が緩やかになったと振り返る。
「勝つために試合の局面で自分がリスクを背負うことをしなくなったと感じていて。もう少し勇気を持ってチャレンジできていたらという後悔がすごくあるんです」
引退が頭をよぎったことも…
ただ、若手に求めるからこそ、自身もベテランとしてどうあるべきかを見つめ直してきた。
38歳にして「10年前よりバスケが上手くなっている」と感じているのは、過去の自分を手放すことさえためらわない、変化する覚悟があるからだ。
自身の怪我や藤井祐眞という強烈なスペシャリストの台頭で、一時期はバックアップとしての役割に甘んじ、ベテランとして穏やかにキャリアを終えるという選択肢が頭をよぎったこともある。
「でも、その後、主力が抜けてチームが大きく変わりました。ニックも引退し、得点源と言える絶対的な柱がいなくなったことで、みんなでやらなきゃいけないという状況になりましたが、それが僕の中ではすごく新鮮で。チームとしては苦しい時間を過ごすことが多かったけれど、僕自身は原点に戻れたような感覚があって。楽しいとまでは言わないけれど、ここ2シーズンは前向きな気持ちでプレーできていましたね」
昨季途中までチームを率いた、ネノ・ギンズブルグHCとの出会いも大きかった。全員が走るスタイルへの転換は、練習の強度を劇的に引き上げた。スプリントの数も身体への負荷も、以前とは比べものにならないほど増えた。30代後半の身体には酷な環境だったが、篠山はそれを「コンディションを上向かせる好循環」と捉えた。ウェイトの数値が今も伸び続けているという事実は自身を更新し続けている証拠でもある。
いい加減、勝ちたい
今季で川崎一筋16シーズン目に入る。これまでチームの象徴として、ベテランPGとして重要な役割を果たしてきた。フランチャイズプレーヤーとしての美学を大切にしながらも、「同じ場所に留まり続けることのリスク」を、誰よりも敏感に感じ取っていた。移籍によって環境を変え、成長していく他チームの選手たちを見て、劣等感を抱いたこともある。
「プロアスリートとして環境を変えるのは、成長するために必要なことだと思っています。だからこそ、このチームの中で変化を恐れずに貪欲に新しいことをやり続けていくことが、自分のテーマとしてあるかもしれないですね」
今も同世代の選手たちが、年齢に抗うようにプレーを磨き続けている。彼らのスタッツを確認することが、試合後の篠山のルーティンになり、その姿を追うことで、競争心が静かに呼び起こされる。
「竹内兄弟(公輔/宇都宮ブレックス・譲次/大阪エヴェッサ)も40代でもう一段階ギアを上げているじゃないですか。それに石井講祐さん(シーホース三河)や古川孝敏さん(信州ブレイブウォーリアーズ)は安定して試合に出場している。34~35歳を超えると、もう仲間意識のようなものが強くなってきて、“みんな頑張ろう”って自然に思えるんですよ。なによりもすごく刺激をもらっていますね」
次のシーズンへの思いが、ゆっくりと心の奥で火を灯していく。
「来シーズンこそは、いい加減、勝ちたいですね」
同世代の仲間たちが示す背中に勇気づけられながら、篠山自身もまたベテランという枠に収まることなく、常に自分を更新し続けていく。
篠山 竜青Ryusei Shinoyama
1988年7月20日生、神奈川県出身。ポジションはPG。'11年、日大からブレイブサンダースに加入。'16年に代表デビュー。りそなグループB.LEAGUE 2024-25シーズン、36歳にして初の個人賞「ベストフリースロー成功率賞」を受賞。178cm、75kg。

長年にわたり挑戦を続けるベテラン選手に敬意を。
りらいぶの三鬼有登取締役執行役員からトロフィーが贈呈された第1回「MVVりらいぶ賞」篠山竜青選手を表彰
株式会社りらいぶが、スポーツ界で長年にわたり挑戦を続け、競技の発展やチームへの貢献を通じて多くの人々に感動を届けてきたベテラン選手を称えることを目的とし、2025年8月に「MVV(Most Valuable Veteran)りらいぶ賞」を創設。



