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「グラウンドに入る資格がない」筒香嘉智の言葉を借りて諫言を呈したカープ中崎翔太が、いま感じているチームの危機

posted2025/12/08 06:00

 
「グラウンドに入る資格がない」筒香嘉智の言葉を借りて諫言を呈したカープ中崎翔太が、いま感じているチームの危機<Number Web> photograph by JIJ PRESS

今季の中崎は51試合に登板し、防御率2.36の成績を残した

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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 勝者も敗者もないオフの日々は穏やかだ。ユニホーム姿で戦ってきた選手たちはスーツ姿で契約更改に臨み、トークショーなど私服姿のイベントではグラウンドとは違う一面を見せる。重圧から解放され、再び訪れる戦いに向けたしばしの充電期間。来季の目標には景気のいい言葉が目立つが、それもオフの風物詩かもしれない。

 広島の主力選手の契約更改は11月25日に始まった。初日に契約交渉を終えた中崎翔太は、穏やかだった水面にあえて波紋を起こすような言葉を発した。前日に契約更改したDeNAの筒香嘉智の言葉を引用する、チーム全体に響くメッセージだった。

「記事で“優勝を目指してないやつはグラウンドに入る資格がない、ユニホームを着る資格がない”という言葉を見て、本当にそうだと思いました。言葉を借りて申し訳ないですけど、全員がそういう気持ちでやらないと。今、チームがこういう状況だからこそ、その思いをより強く、そして思うだけじゃだめだと思う。それは練習や日々の私生活の行動にも出てくる。オフに入りますけど、一番上には絶対“野球”がないとだめだと思うので、この期間にどれだけ野球のことを考えて過ごせるか、そこをチーム全員が考えてやっていかないといけないなと思います」

優勝を知る者の務め

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 2年連続Bクラスという結果に終わった広島は、優勝からも7年遠ざかっている。ここ数年、冬に湧き起こった意気込みが夏場以降には消沈するシーズンが続いている。この時期はユニホームを着ている誰もが“優勝”を掲げる。当然のことだ。ただ、その言葉に従い、突き進むのは簡単ではない。

「言葉で言っていても、行動が伴っていない選手もいる。結果はそのときによるものだからこそ、過程が大事。それができていない選手が多い。少しでも優勝を経験している選手たちが引っ張っていかないと強くならない」

 今年33歳となった中崎は20代前半から抑えを任されている。「3年連続胴上げ投手」という冠が貢献度の大きさを物語る。頂点までの険しさも、たどり着いたときの喜びも肌で感じてきたからこそ、あの熱量を求めているに違いない。だが、優勝を知る選手たちは年々チームを去り、優勝までの道のりを知らない選手が増えた。

【次ページ】 ブルペンを支える存在

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