炎の一筆入魂BACK NUMBER
「グラウンドに入る資格がない」筒香嘉智の言葉を借りて諫言を呈したカープ中崎翔太が、いま感じているチームの危機
text by

前原淳Jun Maehara
photograph byJIJ PRESS
posted2025/12/08 06:00
今季の中崎は51試合に登板し、防御率2.36の成績を残した
若くして栄光をつかみ、挫折を味わった。それでも中崎は諦めることなく、奥歯をかみしめながら這いつくばってきた。そして今年、3連覇した18年以来、実に7年ぶりに50試合登板をクリア。立場は抑えではなく、勝ちパターンでもなかったが、若い中継ぎ陣を支えるチームに欠かせぬ戦力となった。
若い頃から習得に励んできたフォークが新たな武器として確立し、真っすぐの球速も球威も上がった。2球種の安定によってスライダーも有効球となり、シュートを織り交ぜながら円熟味のある新たなスタイルを確立した。30代となり、投球だけでなく、球団トレーナーが管理する肉体的数値やトレーニングの数値も年々上がっている。
「30代になると衰えてくると言われていたけど、僕は逆にだんだん良くなっている。一番伸びる時期といわれる20代後半をケガのリハビリに費やしたことがあるのかもしれないですが、33歳になっても疲れはまったくないし、逆にパフォーマンスが上がっていると思います。だから若い選手にも、『年齢が上がれば上がるほど衰えていくんだから、もっとやらないといけない』ということは伝えたいと思う」
長いトンネルの先に待つもの
ADVERTISEMENT
長いトンネルを抜けて、ようやく見えた光。さらにその先には、もっと輝ける自分も見えている。
「今年は夏場に3試合連続で失点しても我慢して一軍に置いてもらった。『投げさせてもらっている』感が強かったので、もっとパフォーマンスを上げて、結果を残して『なんで俺を使わないんだ』というくらいまで引き上げていかないといけない。中継ぎとしてもまだまだいいポジションを狙っていますし、もっとチームに貢献できるはず。チームからいらないと言われるまで進化し続けられるように、準備していきたいと思います」
中崎の発言でチームに生じた波紋は、うねりとなってチーム全体を変えていくだろうか。彼自身はこれまでと変わらず、高みを目指し進み続ける。

