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“清宮幸太郎の弟”が22歳で現役引退「自分で決めたこと。未練はないです」…六大学ラストゲームで「どうしても打ちたかった」“涙の最終打席”秘話
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清水岳志Takeshi Shimizu
photograph bySankei Shimbun
posted2025/12/05 11:00
六大学野球リーグの最終戦で大学生活最初で最後となるヒットを放った清宮福太郎。大学で野球は引退するという
春と秋の両シーズン、控え選手だった福太郎はベンチからレギュラーを応援する役に徹した。一番、大きな声を張り上げてナインを鼓舞した。チェンジになって守備から戻ってくるナインを、真っ先にベンチを出て一番前で拍手をしながら迎えた。試合後には、いつも声がかれていた。
スタンドから見ていると、円陣ではいつも最後方にいた。みんなの肩を抱いた姿は、チームを支える土台となって安心感を与えているように見えた。
盤石の早大レギュラー陣…裏方を買って出た福太郎
今年の早大の外野手陣のレギュラーは盤石で、福太郎が出場する機会は少ないだろうと想像できた。春季リーグの2試合目からベンチ入りした彼を注目して見ていると、「裏方に回って盛り上げ役を買って出ているんだな」ということはすぐに見て取れた。
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「本来なら野球のプレーで目立たないといけないんですが……4年生で時間ももうないですし、確実に貢献できることというと、自分の場合、声を出して励ますことだろうなと思って。4年生だから後輩よりも言い易いところもある。
内容的に意味のある言葉はないかもしれませんが、どんな言葉でもいいんで。ピンチでベンチが静かになるとグラウンドに立っている選手に重い雰囲気は伝わるので下を向かないように。昨年、代が替わって新チームがスタートしてAチームと言われたときに、そこだけはやり切ろうと誓いました」
そんな姿勢がナインの力になったことはいうまでもない。そしてナインも後押しをする。
小宮山悟監督は試合後の会見で福太郎の初ヒットに寄せて、こうコメントしている。
《他の4年生によると、(福太郎は)常に人一倍声を張り上げて、一生懸命チームに貢献してきたそうです。今季、私が福太郎をベンチから外し、他の選手を入れようと思ったことが何試合かありましたが、学生コーチから「福太郎を入れてください」と進言されました。仲間たちが、なんとか彼をすくい上げようとしていました》

